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覗きの冤罪をかけられパーティから追放されました。

 それは、A級ダンジョンを攻略した次の日の出来事だった。


 宿屋で一夜を過ごし、次の日の朝、勇者のロックに呼び出されたため、ロックが泊っている部屋に向かった。

 部屋に入るとそこには、パーティーメンバーがそろっていた。

 

 ありとあらゆる魔法を使いこなし、その中でも炎に関する魔法が優れていることから、獄炎の魔女の異名を持つ、魔術師のアーシャ。


 世界に5人しかいないといわれている、蘇生魔法の使い手であり、戦場で奇跡を起こせることから、奇跡の聖女の二つ名を持つ、神官のナナ。


 最上位であるS級のダンジョンを単独で攻略したことがある実力者であり、そこから付いた二つ名が最優(さいゆう)迷宮探索者(ダンジョンシーカー)である、盗賊のカナ。


 そして、この勇者パーティーのリーダーにして、勇者の証である《聖剣顕現》の能力(アビリティ)をもっている、勇者のロック。


 その仲間である彼らが僕に対して、まるでごみを見るような視線でこちらを見てくる。


「おや、どうしたんですかみなさん。そんな、ゴミを見るような視線で僕を見つめて。もしかして、僕なんかやっちゃいました?」

「呼び出された理由に心当たりはないのかい?」


 この視線から何となく想像できるが、多分僕は彼らに対して信用を失うことをしてしまったのだろう。冒険者パーティーは信用が第一だ。パーティーから信用を失ったメンバーの末路は決まっている。

 

 「もしかして、追放ですか?」

 「なんだ、よくわかってるじゃないか。アレフ、君をこのパーティーから追放する。」


 予想道理の言葉だった。正直に言えば、勇者パーティーに特に思い入れもないため、抜けるとしたとしても後悔自体はない。しかし、僕がこのパーティーにいるのは、とある人物の依頼であるため、抜けるわけにはいかないので、ロックを説得しようとする。


「あの、理由を聞かせてもらってもいいですか?これでも僕、戦闘面は役に立ってたつもりなのですが……。」

「たしかに実力は問題ない。現に僕らは、君に何度も助けられてきた。でも、問題なのは、君に対する信用面だよ。追放するのは、それが理由さ。」


 ロックは非常に冷静に受け答えしてるが、その声音には失望の感情が込められていた。

 さらに、周りのメンバー達も俺の言葉を聞いた瞬間さらに厳しい視線を向けてきた。

 俺はここ最近の出来事を思い出してみるが、全く心当たりがなかった。むしろ、ダンジョン攻略以外の時では、三日前に町でロックを見つけたくらいでしか、メンバーに会っていないし、見かけすらもしない。


「すみませんが、本当に心当たりがないんですよ。いったい、僕のどの辺りの行動が信用を失わせたんですか?」

「しらばっくれないで!あんたが、昨日女性の露店風呂を覗いたことも覚えてないの。」


 魔導士のアーシャが怒鳴り声で口をだしてきた。

 風呂を覗いただと。その日の俺は宿屋についてすぐに寝たため、本当に心当たりが無い。何かを誤解していると思って弁明しようと思い口を開こうとすると、それよりも早く、俺が本当にとぼけていると思い込み、それに対して怒り心頭なアーシャが口を開く。


「そうやって覚えていないふりをしても無駄よ。ナナだってその場所にいたのよ。」

「はい、私もその場所にいましたが何者かが透明化をして覗いたんだと思います。人一人が、ぎりぎり隠れられなそうな草むらの方から、草が擦れるような音が聞こえてきたので石を投げたら、痛ッ、という声が聞こましたので覗かれたのは確実です。」

「更には、カナに夜中、あんたらの部屋をこっそり調べてもらったけど、その様な魔道具が無かった事も確認済み。そして、宿屋の周辺には、結界も貼ってあったわ。」

 

 神官のユナがアーシャの発言を肯定しながら、覗き事件の補足をし、シーフのカナが、親指を立てて、その発言が正しいこと肯定している。

 そうなってくると、一番怪しいのは、魔力なしで透明化出来る能力を持っていて、なおかつ、宿内にいた…。


「だから、あんたしかいないのよ、アレフ。分かったなら、さっさと荷物をまとめて出て行きなさい。」

「ちょっと待ってくれ。犯人は俺ではない。」

「何よ!あんたしかできないでしょ。魔法もなく透明化して、覗きに行けるのは。」


 アーシャは俺に対して叫んでおり、それに対して、メンバーのみんなも同意するような視線を僕に向けられていた。

 俺は、その声と視線を横に流しながら、必死に冤罪を晴らそうと、頭をフル回転させる。

 その結果、証拠は二つあることを思い出したが、そのどちらとも能力の性質上、証明することは不可能であるのだが、一応説明することにした。このままやってもない罪を押し付けられるのは納得できないからな。


「信じてもらえないかもしれませんが、僕が透明化を使用している時は、どれだけ大きな音を出、俺が発生源であるかぎり、俺以外に音が伝わることはない。そして何よりも重要なのはですね、透明化中はものに触れられないことなんですよ。いや、正確に言えば、僕が触れようとしても触れることができない。」


 俺の透明化は使用している時、物に触れることが出来ない。しかし、それは例外を除けば、証明することが出来ないから、後は彼らがどこまで僕を信じてくれるかによるが、今の四人の視線を見る限り、全く信用されてませんね。

 

「君が犯人ではない証拠があることは分かった。だが、君には抜けてもらいたい。君の能力が悪用出来ることがわかって、また事件が起きることに不安を覚えて、パーティー内の士気が下がるかもしれないからね。更には、君が犯人である可能性が残っているのが一番の理由だよ。」

「これまで何年も一緒に冒険してきたじゃないですか。そんな僕を信じられないと言うんですか。」


正直、僕も仲間だと思ったことは一度もなかったし、むしろこのパーティーを抜けたかった。しかし、このままだと冤罪をかけられちゃうし、さらにはある依頼に失敗してしまうから、なんとかみんなを説得しようとするが、多分無理なことは人の心が読めなくても分かる。

 目の前の仲間たちの目は一切僕を信用していない目をしているから。いや、ロックに関しては最初の頃からずっとだったけど。

 そんなことを考えていると、彼が近づいてきて、僕にしか聞こえない声でこう囁いた。


「分からないのか?君はアルト様から選ばれてないのに何を言っているんだ。僕は一度も神に選ばれていない君を仲間だと思ったこともないし、仲間だとも思いたくもない。」

「…………」

「しかも、君の場合はギルドの代表として入ったじゃないか。このメンバーの中で裏切る可能性が一番高いのは、君なんだよ。なぜなら、この中で唯一、アルト様を信仰していないからね。」

「裏切り……」

「更にはアルト様の啓示によって新しいアルト様に選ばれしメンバーが次の街にいると、神が知らせてくれた。だから、君は用済みなんだよアレフ。」


 これで、はっきりした。ロックは俺が冤罪であることを知っていながらも、この冤罪を使って俺を追放しようとしている。もしくは、この事件をあえて引き起こしたのか。たぶん、事件をあえて引き起こしたのであろう。

 もし、本当にたまたまだとしたら、間違いなくギルドに告発しているからだ。そうなってくると、これから先もギルドに告発することはないと思う。


 そしてこれだ。このパーティーを抜けたい一番の理由。それは、俺以外のメンバー全員が天聖教の主神アルトを信仰しているという点だ。中でもロックは、狂信と呼ぶにふさわしいほどの信仰心を持ち合わせており、正直このパーティーの中では、異端な俺は早くパーティーを抜けたかった。

 

 僕の代わりが、新しく入るのなら抜けたとしてもギルドマスターに文句を言われることもないだろう。きっと、多分。


「じゃあ、抜けさせてもらうよ。荷物は武器以外おいていけばいいかな?」

「ほぉ、異教徒にしてはなかなかいい心がけだな。その心意気に免じて、特別にギルドへの告発はなしにしてやろう。」

「一応、感謝しておきますね。まぁ、この間者が本当に必要かは別として。」

「ふん、ロックの優しさに感謝しなさいよね。そうじゃなければ、今頃、あんたは牢屋の中だったんだからね。」

「温情を貰っているのにまともに感謝もできないのですか?これだから異教徒は信用できないんですよ。」


 ロックたちは、俺がパーティーから抜けたからか、辛辣な言葉を浴びせてくる。普段、心の中でこう思っていたと考えると、よく隠し通せていたなと、逆に関してしまうレベルであった。


「じゃあな。二度とお前みたいな屑に出会わないことを祈るよ。」

「それは、こちらのセリフですよ、狂信者さん。」


 僕はその言葉を吐き捨てると、勇者パーティーに背を向けて……

 一刻も早く離れたい一心で、足早に部屋を後にした。




 

 

 

 

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