第1章6話
父ルドルフの顔が真っ赤になっていく。
「貴様は屋敷に帰って来てから何をやっていたんだ。少しでもスキルの概要が分かればそのスキルでも生きて行く事が出来ただろう」
この場合の生きて行くとは選民意識の強いルドルフは貴族としてって意味だ。
「発現すら出来んのか?」
「はい、申し訳ございません」
俺は俯くことしか出来ない。
「もういい貴様はガード家にはふさわしくないな。追放だ。何回も恥をかかせよって。多少の路銀は渡してやろう失せろ」
「そんなっ、父上待ってください」
俺は今日の朝まで優しかった父に懇願した。
「うるさいっ黙れ儂は貴様の父ではもうない2度とその顔を見せるなよ?さもなくば」
父ルドルフいやルドルフはそう言うと手に魔法陣を発現させた。
まずいと思い顔を青ざめさせながら俺は諦めた。
やはり前世の記憶があって1度死んだからまた大丈夫なんて思えなかった。
1度体験しただけにより恐怖で身が竦んでしまった。
「いえ、ルドルフ様路銀まで頂けるとは感謝致します。その感謝を伝えたかっただけです」
そう言うしかなかった。
「ふんっ、今すぐ荷物をまとめて出て行け。
路銀は執事に渡しておく後から受け取るといい」
「では失礼します」
俺は悔しかった。たかがスキルされどスキル。
確かにスキルは強力だ。でもスキルが無くても魔術や剣術は使える。
何故スキル1つでこうも簡単に切り捨てられるのだ。
涙を目尻に為、絶対に泣いてやるもんかと俺は思いながら部屋に戻った。
部屋に戻ると既に机の上に皮袋が置いてあった。
中身を確認すると金貨10枚。
日本円換算で100万俺の持ってる金貨を合わせて200万。
この国や王都を離れる為の旅費を考えても節制して半年は持つだろうと思い。
ふと自分の格好を見て考えた。
通りがかった使用人で俺と同じ位の歳の子供を持ってる人を呼んだ。
「アロウ様どうしましたか?」
この人は私設兵士の人だ。
「今日でガード家を追放されるから様は要らないよ。それでお願いがあるんだ」
兵士の人は顔がポカンとなりながらも聞いてくれてる。
「君の子供の服を数着買いたい。新品や中古を買おうにも僕にはその知識がないんだ」
僕はその兵士の人の名前を聞こうとしたがやめた。
もし服を売った事がバレたら怒られるかもしれないからだ。
その兵士の方の仕事が終わるまで待ち、2人で家を出た。
兵士の人に教えて貰いながら旅に必要な物を取り揃えた。主に保存食や簡易テント等の子供でも持てる軽いやつだ。
兵士の家に着き、家に上がって欲しいと言われたが固辞した。
家族に顔が見られてしまえば危険が及ぶかもしれないと思ったのだ。
服を3着もくれた。
俺はすぐにその服に着替えると自分の着ていた服を兵士さんにあげた。
「これを売ると良い。そして金貨1枚とこの手紙をクロウ兄様がもし家に戻って来た時に届けて欲しい」
手紙を渡した。
まぁ、今回の経緯を書いたものだった。
ルドルフとはあんな別れ方をしたので唯一血の繋がりのあるクロウ兄様には説明と別れの挨拶がしたかったのだ。
兵士さんは金貨は頂きすぎと言って固辞しようとしたけど断った。
これだけ渡して置けば手紙は届くだろうという単なる下心だった。
どうしてもと言うので俺は宿に泊まる時の説明に着いてきて欲しいと頼んだ。
普通に考えれば宿に9歳が泊まるのは難しいと思ったのだ。
兵士さんは喜んで快諾してくれて。
宿屋のおじさんには両親が亡くなって1人で母方の実家まで帰る途中という嘘の経緯を話してもらって宿に泊まれる事になった。
宿は大銀貨1枚で朝晩の食事付きだった。
俺は払おうと思ったら既に兵士さんが払ってくれていた。
兵士さんによるとこれくらいさせて下さい。何の力にもなれず申し訳ございませんとの事だった。
なら俺は気持ちよく受け取り感謝を伝えて兵士さんと別れた。
宿屋のおじさんから鍵を受け取り俺は部屋に入ってすぐに寝てしまった。
朝日が差し気持ちのいい朝だった。
昨日はふて寝してしまったからな。
俺はまずお金を数える事にした。
金貨17枚
大銀貨195枚
昨日保存食とテントを買う時に両替したので金貨の他に大銀貨を多く持っている。
普通の一般の人は金貨は使わず普通は大銀貨で暮らすのが一般的らしい。
という事で、皮袋をもう1つ出し金貨16枚と大銀貨150枚を肩がけカバンの奥底にしまい
腰に付ける小さい皮袋には大銀貨45枚と金貨1枚を念の為に入れた。
下に降りると宿屋のおじさんに挨拶をされ、返事を返していると食堂に案内された。
朝はパンとベーコンエッグとスープだった。
とても美味しかった。
おじさんに旅路用のローブを買える場所と乗り合い馬車の場所を聞いた。
お礼を伝えて俺はすぐにフード付きローブを買い。
王都を離れる事にした。
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