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幼馴染より妹宣言された

「はっ?」


「いや、だから――――」



 幼馴染であり、ご近所さんでもある同級生の、千羽せんば すいが、なぜか朝っぱらのリビングで朝食をとっている。

 

 今までにも、こういったことは何回かあったが―――。


 俺が驚いているのは、何も朝食をとっていることではない。 翠から発せられたその言葉だった。



「だーかーら、僕は今日から君の妹なの」


「……あぁ? んんんん!?」


「ぷっ、ほんと予想通り」



 俺はこの日、生きている心地がしなかった。



―――――



「どういうことだよ、親父っ!」


「いやぁ、どうもこうもないんだけどなぁ」



 親父は困ったほうに頬を掻き、横でニコニコとしている翠のお母さん(おばさん)――――いや、今はもう俺の母親でもあるのか?


 まぁ、いい。

 とにかく、とにかく今はなぜの状況に陥っているのか……俺はそれだけを知りたい。



「朝っぱら……あいつの開口一番は本当?」


「ん? あぁ、そうだ。 今日から、翠ちゃんはお前の妹だ。 よかったな」


「よくねぇぇええッ!」


「な、なんだよ、大きな声を出しやがって……」



 親父は、堂々とサムズアップをかましてくる。

 サムズアップでどうにか乗り切る気だったのか、この親父は…………。


 方や、おばさんは相変わらずのニコニコ顔。

 ―――おい、よく見てみれば、こいつら机の下で手をつないでな――――

 ないな、手をつないでいるっていうか、思いっきり親父つねられてるじゃん。

 

 これぜったい、俺に説明するの忘れてただろ。



「はぁ、もういいよ……おばさんも、それくらいで許してあげて」


「あら、私のことは母さんと呼んでいいのよ? それよりも、いきなりでごめんなさいね……橘花君」


「いや、いいよ…………やっぱ、もう少し時間くれない?」


「……もちろん、橘花君の整理がつくまで待ってるわ―――この人と、良く話しておいてね? 藤次さんも―――しっかりとね?」



 抜け目のない人だ。

 おばさんは、藤次、つまり親父ににっこりと満面の笑みを向ける。

 親父はというと、冷や汗を滝のように流しており、顔なんて真っ青だ。


 まぁ、天然すぎる親父にはこれくらい気の強い人がいいのかもしれない。


 だが、時間は欲しい。 何事も整理しないと物事は始まらないし、な。



「親父、いつからこの話が?」


「んーっと、半年……いや、交際を含めると橘花と翠ちゃんが中学の入学したばっかりくらいかなぁ……そこからだ」


「なるほど、ね」



 まぁ、別に俺は、親父が新しい出会いして再婚をするのは、反対はしない。

 だって、俺には、生まれてから母親がいないからな。

 

 そのため、再婚したとて……多少の、本当に微々たるものはあるが、いつも仏壇の前で悲しそうにしている親父を見るよりはマシだろう。


 ……この話を聞けば、もしかしたら、悲しそうにしていたのは再婚をする後ろめたさ、かもしれないが…………何事も再スタートは大事だ。

 俺は、親父を応援するし、今回の結婚も一つを除いては大いに賛成だ。


 だが、その除けない一つが大事なのだ。



 親父との話が終わり、俺は一人自室にこもっていた。

 もちろん、リビングを発つときには「おめでとう」と言っておいてやった。

 

 親父は俺に話をつけてくれた―――。 あと残すは、俺個人の心残りだけ。



「――――はぁ、好きだって気づくのがもっと早ければなぁ」



 そう、俺は――――。



 幼馴染である千羽 翠に恋をしていた。

読んでいただきありがとうございます。

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