第93話 入寮
「それじゃあ、私は入れないからここでね」
「うん、ありがとう」
アシムはエアリスと分かれ、ユーリと共に男子寮へ入る。
荷物は大体先に送っておいたので、今はカバン一つ背負っている。
事前に知らされていた部屋へ向かう。
「ユーリは隣の部屋か」
「ああ」
一応主人と使用人という立ち場なのだが、出会ったときの流れで敬語は使わないでもらっている。
アシムとユーリはそれぞれの部屋に入り荷ほどきをする。
アシムが作業をしていると、数分でユーリが入ってきた。
「あれ? 荷ほどき終わったのか?」
「お前ほど荷物もないからな」
「確かに……手伝いに来たのか?」
アシムは本やら剣やら結構持ってきていた。
「ルームメイトがいた」
「ん?」
アシムは自分の部屋を見渡すが、ベッドや机は一つしかなくルームメイトがいるようには見えない。
「使用人だからだろ」
「なるほど……」
学園生は生徒の間、家柄の差はなくみな平等だと謳っている。
「まあそんなことだろうとは思ったけど、入りからこれか」
学園生の間は平等といっても、大人になったら格差は確実にでるのだ。
貴族相手に強気に出て、将来を棒に振りたいやつはいないだろう。
それよりも今から貴族に媚びを売っておいたほうがいくらかマシだ。
平等という言葉は、平民を受け入れるためだけの理由に成り下がっているのだ。
「ルームメイトとは仲良くしろよ? 同じ使用人だろうし」
「ああ」
ユーリがボッチ力を発揮しないように助言してやる。
「じゃあユーリはそこの本を棚にいれてくれ」
ユーリは無言で作業を開始する。
「これ終わったらごはん食いにいこうか」
部屋の整理が終わり、ごはんを食べにいく。
食堂があるが、気分転換に外へ出たくなった。
「エアリス様とは行かないのか?」
「う~ん。約束もしてないし、いいんじゃないかな?」
姉も寮にいるはずだが、友人もいるはずなので誘うのはやめておく。
「あ、そうだ」
アシムはユーリのルームメイトのことを思い出し、隣の部屋をノックして中に入った。
「えっ!」
「え!」
アシムは扉をそっと閉じて目を瞑る。
「どうしたんだ?」
「ユーリ君! 扉をノックしたら返事があるまで入っちゃダメだぞ!」
「俺に言うべきことなのか?」
「自分に言い聞かせているのさ!」
「あっそ。入るぞ」
「待て!」
「何故止める?」
「言っただろう? 返事があるまでは入ってはいけないと!」
「何かまずいのか?」
「人には人それぞれの趣味があるってことさ」
「そうか。見ない方がいいんだな?」
アシムはゆっくり目に力を込めながら頷く。
そしてもう一度扉をノックする。
「は、はい! どうぞ」
返事が来たので扉を開く。
中を見たユーリは別に変なところは目につかなかった。
「初めまして!」
お互い挨拶を交わし、一緒に食事に行くことになった。
アシムは部屋を出るときに誰にも聞こえない声でポツリと呟いた。
「まさか女物の下着を集めてるとは……」





