第86話 注目の的
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「リッピ・バレンタイン侯爵殿! はじめましてアシム・サルバトーレです、以後お見知りおきを」
結構な大物に声をかけられた。
実質この会合のナンバー2である。
「いえいえ、こちらこそよろしく頼むよ」
その言葉とは裏腹にその眼は、アシムを見定めようとしていた。
「ふむ。子供と侮ってはやられるわけだ」
アシムに何かを感じたのかこちらを見透かしたような言葉が出てくる。
「デュラム家のことですか?」
「それだけではないが、まあそうだな」
何やら警戒されているように感じる。
「君の話は有名でね。少し聞かせては貰えないかね?」
「はい。私のお話しでよければ話させていただきますよ」
「それは良かった。よろしければ夜風に当たりながらどうかね」
「いいですね。アイリス、お兄ちゃんは少し外でお話ししてくるからいい子にしてるんだよ?」
「はい……です」
少し元気のない返事だが、聞き分けが良くて助かる。
その分罪悪感も増してくるので、後でたっぷり相手をしてあげよう。
アイリスは少し手をギュッとするとそのまま離れ子供たちの輪の中に入っていく。
どうやら仲良くなった子がいるらしくその子と楽しそうに話し始めた。
「では行きましょうか」
アシムは飲み物を侯爵の分も取り手渡す。
「これはこれは! そのお歳で気配りができるとは驚きですな!」
子供が大人にお酒を手渡すという不思議な光景が起こる。
侯爵と一緒に外へ出るときにダライアス辺境伯が目に入ったが、仲のよさそうな貴族や奥様方などの家族を巻き込んで盛り上がっていた。
「気になるのですかな?」
庭に設置されたテーブルに飲み物を置きながらバレンタイン侯爵が話しかけてくる。
「ええ、ダライアス辺境伯は交友が広いのですね」
「貴族になってからは色んな人と交流を持つ辺境伯としては珍しい人ですな」
「貴族になる?」
「ご存じないのですかな?」
「無学なものでお恥ずかしい」
貴族事情は自分の周辺しか把握していない。
「ダライアス辺境伯は昔将軍でしてな、その時の働きを評価され辺境伯になったのですよ」
「なるほど、元将軍なので信頼も厚く敵国との前線を任せられるというわけなんですね」
「そういうことですな。王の信頼も厚く実績も十分、それに気さくな性格とくれば人気にもなりましょう」
先ほど話した時は荒々しさしか感じなかったが、中々凄い人らしい。
「色々な方に好かれているのですね」
「まあ、注目度は高いですな」
「注目?」
「国王様のお気に入りですからな、懇意にしたい輩は沢山いるということですよ」
「なるほど」
貴族に注目されるというのは大変そうだ。
「注目と言うと、アシム殿が今一番の注目の的ですな」
「僕が!? あ、失礼しました」
貴族に注目されているとは思わなかったのでつい素が出てしまった。
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