第85話 貴族交流
アシムはダライアス辺境伯に疑問をぶつけてみた。
「なぜこの晩餐会に? 辺境伯といえば公爵と同等だと思うのですが?」
公爵レベルになると同格の貴族は招待しない。
公爵同士が会うのは王都での晩餐会のみだ。
それ以外で会うとなるとプライベートになる。
公爵というのは招待する側であり、招待される側ではないという考えからこうなったそうだ。
公爵を呼べるのは王様だけということなのだろう。
しかしその中でも辺境伯は特別な地位にある。
公爵と同等だが招待は受ける。そのかわり招待は下級貴族でもしないという身分だ。
貴族というより国のために戦う英雄という側面が強いのだ。
「アダンが来るからな! 久しぶりに会いたくなったのさ! ガハハハ!」
アダンと相当仲がいいと見える。
もしかしたら父はこの辺境伯を招待するためのダシに使われたのかもしれない。
英雄を晩餐会に招待できるのだ、公爵の中でも箔がつくだろう。
「それよりも小僧」
小僧呼ばわりされるが、風貌と相まってとてもしっくりきた。
「お前も中々の気概があるそうじゃないか? デュラムだっけか? ぶっ倒したんだってな!」
「そのお話しですか。物騒な内容なので後でもよろしいでしょうか?」
床に届かない足をブラブラさせながら答える。
「そうか? 他の奴らも聞きたそうだが?」
周りを見ると、慌てて視線をずらす人たちが大勢いた。
「といっても皆さんの知っている以上の情報は無いですよ?」
「本人から聞きたいのさ」
貴族を蹴散らした武勇伝に興味津々のようだ。
「わかりました」
結局押し切られる形で話をし、禁書の部分は伏せて伝えた。
「どこの国が裏で糸引いてるか調べるまでもないな」
現在戦争中の相手、オグラード皇国と言いたいのだろう。
そこまで話をした時、主催のコーデイル公爵が喋り始めた。
「皆さまよろしいですかな?」
コーデイルの呼びかけに皆静かになる。
「お話しが盛り上がっている中ではありますが、柔らかいソファのあるリビングにてお寛ぎ下さい」
主催の案内により全員でリビングへ集合する。
そこには子供たちや各夫人方も待っており、大所帯になった。
これには狙いがあり、少人数では話しかけにくい相手にも人数を多くすることで話しかけやすくするためである。
コッソリ抜け出してもバレにくい状況であるため、重要な話をする場合は外に出ることもある。
「お兄様!」
子供の群れから一人の天使が飛び出してきた。
「アイリス! 走ったら危ないじゃないか」
転んで可愛いお顔に傷がついたら一大事だ。国の損失である。
「えへへ! ごめんなさい!」
反省していないような態度で謝られるが許してしまう。
「兄妹仲がよろしいのですな」
声をかけられたので振り返ってみると、ちょび髭を生やした細身の貴族様が立っていた。





