第84話 晩餐会
「ようこそお待ちしておりました」
門から使用人に案内され玄関にたどり着くと、コーデイル夫人とその娘さんが出迎えてくれた。
夫人も娘さんも美女といって差し支えない美貌を持ち合わせていた。
挨拶も早々に中へ案内される。
すでに何人かの客人が到着しており、続々と人が集まってきた。
「それでは皆様晩餐会を始めたいと思います」
全員集まったのだろう。晩餐会が始まる。
「この度はわたくしグレイグ・コーデイルの招待に応えていただきありがとうございます」
今回の主催の挨拶から始まる。
そこから長ったらしい貴族の紹介があり、挨拶を全員終える。
アシムの時は新進気鋭で将来有望の子供ということで注目された。
「それでは食事を楽しみながらご歓談を」
食事が次々と運ばれてくる。
アダンから事前に聞いているのだが、この晩餐会は交流を深めるための晩餐会なので積極的に話しかけるのが礼儀なのだとか。
食事を食べ進めているとちらほらと会話が聞こえてくる。
「この時期私の領地では魚がおいしくてね! 是非新鮮な魚を食べにいらしてください!」
「それはそれは是非ご馳走になりたいですな」
「娘さんの婚約が決まったとか? いやはや、めでたいですな!」
「あの商会を招き入れてからうなぎ上りでしてな! あなたに頼んで正解でしたな!」
思い思いの話が聞こえる。
面白いことにこの席順は公爵様が決めた席で、誰と誰を会話させるか考えられているのだ。
そういった意味では話が盛り上がっている場所は成功と言える。
ただアシムは何故この人が隣に配置されたのかわからなかった。
「ダライアス辺境伯でしたか?」
「ん? ああそうだが、サルバトーレのガキか」
到底貴族とは思えない言葉遣いに、傷が多く残るいかつい顔。
ライゼンの方がまだ優しく見える風貌だった。
「てめぇの親父には世話になったからな、話したいことがあるなら聞くぞ?」
上品な肉を豪快に口に放り込みながら答えてきた。
「父上の世話になったんですか?」
「ん? 聞いてねぇのか?」
ちらりとアダンを見て話し始める。
「隣国のオグラード皇国と戦っている時に助けてもらったんだよ」
「もしかして辺境に行って活躍したって話ですか?」
「ああ、それだな。その功績であいつは貴族に召し上げられたからな」
なんと隣のおっさんはサルバトーレ家が貴族になるきっかけとなった貴族様だった。





