第82話 休息
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大変助かっております!
「僕に招待?」
「はい。こちらをどうぞ」
王都から持ってきたのだろう、招待状を手渡される。
「アシム・サルバトーレ”准男爵”か……」
どうやら1貴族として呼ばれたらしい。
それにしても准男爵を公爵が招待というのは異例中の異例である。
「まあ断るわけにもいかないか」
「間違ってもそれだけはおやめください」
メイドさんに釘を刺される。
「流石に公爵様の招待は断らないよ」
「伯爵様もです」
「僕前科ないよね?」
なぜか謂れのない注意を受けるアシム。
「申し訳ございません。アシム様を見ていると心配で」
「”まだ”何もやっていないのにすでに信用がないなんて」
「まだ?」
メイドさんの眼鏡がキラリと光る。
「大丈夫! 何もしないって」
「それならばよいのですが……」
いつからこんな信用がなくなったのかわからないがメイドさんは心配でたまらないらしい。
「とりあえず今は海を楽しもう。君も疲れたでしょ? ゆっくり休んでいきなよ」
「いえ、私は王都へ帰らねばならないので」
「そんな急ぎの用なの? 僕に命令されたって言っていいんだよ?」
実際そうなので何も問題がない。
「そうですか。ではお言葉に甘えて」
そういうとメイドさんはメイド服を捲り上げて脱いだ。
「え!」
アシムは予期しない出来事に固まってしまう。
「どうかなさいましたか?」
そこには水着姿の女の人が立っていた。
「びっくりした……」
「ふふっ」
悪戯が成功した子供のように笑ってメイドさんは仲間たちの所へ駆けていった。
「最初から遊ぶ気満々じゃないか!」
服の下に水着を着ていたのだ、最初から一緒に遊ぶ予定だったのだろう。
悪戯されて少し気恥ずかしかったが、飲み物を飲んで誤魔化す。
「エリゼ…なんだよ?」
こちらを見てエリゼが微笑んでいる。
「いい主人に仕えることができて嬉しいです」
「いきなりだな」
「何と聞かれたので今考えていたことを正直に答えただけです」
「そうか」
「私もユーリもアシム様に拾っていただけなければ今頃死んでいたかもしれません」
「大袈裟だって」
「いえ、実際抗争まで発展していたのです」
確かに闇組織同士の抗争に女の人が巻き込まれて無事でいられるとは思えない。
「別にやりたいことがあったらそれをやってもいいんだよ? ここでの仕事はそれまでの繋ぎでいいから」
「やはりアシム様はいいご主人様ですね!」
「どうだろうね」
アシムはこれから貴族社会で生きていかねばならない身分だ。
厳しい社会で時としては悪事に手を染めてしまうかもしれないと思っていた。
人を殺める判断もするかもしれない。
そんな戦いが起こりえる厳しい世界なのだ。
「とにかく今は休むか」
つかの間の休息になるであろうバカンスを今は楽しむことにした。





