第74話 組織の方針
ライゼンは組織の幹部を集め会合を開いていた。
「貴族の犬になれだ? ふざけんなよ! そんな舐められていいのか!?」
頭を剃って刺青をいれている男が怒号をあげる。
「鷹が動いた」
「上等じゃねえか!」
「敵対したいなら勝手にしろ! これは決定事項だ。意見を許した覚えはないぞ?」
ライゼンが集まった一同を見渡すと、静かになった。
「いいか? これは決定事項だ! 異議は認めん!」
ライゼンの有無を言わさない言葉に誰も反応ができない。
「わかったなら解散だ! ユルゲンお前は残れ!」
ボスの一言により散り散りになる。
部屋にユルゲンとライゼン二人きりになった。
「ギュスタブが不満そうだったが?」
「無理やりにでも言うことを聞かせろ」
「最近のギュスタブの行動を見ると無理そうだぞ? 今回の襲撃命令もあいつが勝手に出したからな」
「もし歯向かうようなら消せ」
「そんなにか?」
「ああ、今回は洒落にならん。王家に目をつけられているからな」
「鷹か……抵抗はしないのか?」
組織としてのプライドはどうするとユルゲンは聞いている。
「未来の公爵を敵に回してしまったからな」
ユルゲンはまだその報告を聞いていなかった。
それだけギリギリのタイミングで手に入れた情報だったのだ。
「どういうことだ?」
「アシム・サルバトーレを知っているな?」
「今回のターゲットの一人か」
「そいつは王家のお気に入りだ。将来公爵を約束されている」
「なに?」
「この間の国家反逆の件だが、親の名前を使って隠しているが解決したのはその子供だ」
「なんてことを」
将来とはいえ、公爵(国のお気に入り)を敵に回して国は絶対許さないだろう。
一族打ち首となっても仕方がない。
この組織に所帯を持っている人間は結構いる。
仕事の性質上事情をしっている遊郭の女と結婚する人がほとんどだが、大事な家族なのは変わりがない。
いや、むしろ社会の闇を知ってる者同士余計に絆が深いかもしれない。
「だからだ。今回は誰一人として勝手はゆるさん! もしもが起こったらわかっているな?」
ライゼンはユルゲンの目を真っすぐ見つめる。
「わかった、処分は俺がしよう」
「任せたぞ。場合によっては俺も動く」
「そうか」
組織のボスが直接処分に動くこと。
それが、今回の件の重要性を物語っていた。





