第70話 サルバトーレ家襲撃⑥
禁書と気絶している女を回収した男は突如現れた人物に困惑する。
「失敗したか……」
この子供は今回の作戦の重要ターゲットだった。
人数もかけておいたはずだ。
だがこうして目の間に現れたということは、作戦を失敗したことを示していた。
男は焦っていた、今回の作戦を失敗することは許されない。
自分たちの縄張りは自分たちがルールでなければならない。
例え相手が貴族であろうと、組織が優位に立たなければならないのだ。
☆
「やってくれるじゃないか……」
アシムは倒れているエアリスと、頑張って戦ったであろうユーリを見る。
「覚悟しろよ?」
アシムが凄むと、周りの男たちは息を呑んだ。
「き、禁書を開け!」
一人がそう叫ぶと、閉まっていた禁書を男が開く。
アシムと戦ったことのない男たちだったが、アシムに潜む”なにか”を敏感に感じ取っていた。
「我が名の元に―――――――」
男が何やら呟いている。
禁書を使うときの呪文なのだろう。
流石のアシムも後ろ側にいる敵にすぐ攻撃を加えることは出来なかった。
「うっ!」
ユーリが膝をつく。
エアリスはその横で気を失っていた。
「効かない!」
何も変化を見せないアシムに驚いた男たちだったが、説明してあげる義理はない。
これ以上長引かせるのも意味は無い。それにアシムはあるものが気になって仕方なかった。
(この騒ぎはまだ広まってないよな? つまり、このまま隠密に解決してしまえば禁書が手に入る!)
アシムは禁書がとても気になっていた。
自分に似た力ということもあり、一度触ってみたかったのだ。
「王様にまた取られる前に!」
本音とともに男たちに襲いかかる。
警戒は怠っていなかったようで、ちゃんと反応する。
「ぐっ!」
しかし、アシムは苦も無く次々と倒していく。
(流石に一撃とはいかないか)
この集団は酒場の人達よりも強いらしく、フェイントなどを織り交ぜないと倒せなかった。
(スピードだけで圧倒は無理か)
剣技だけで見ればエアリスの方がまだまだ上だ。
そのエアリスが弱っていたとはいえ、倒してしまう男がいる相手だ。
「この!」
勝てる自信はある。
剣技だけではなく、魔法も織り交ぜているので隙はない。
「逃げるな!」
手こずっている間に禁書を持っている男が逃げ出した。
「くそっ!」
せっかくの禁書を逃がしてたまるかと、アシムは”無意識”に神聖魔法を発してしまう。
「あ! やべっ!」
人間相手に使ったことがないので途中で気づいて止める。
「ぐぁ!」
しかし黒い魔法に当たってしまった男は苦し気にしてうずくまる。
その瞬間アシムの中に何かが入ってきた。
「なん……」
男の記憶だった。
生れた頃から、組織に入って色々あったらしい経験がフィードバックされる。
一瞬のことに動揺したが、相手側も混乱したようで固まっていた。
それと同時にアシムは禁書の存在を感じ取れるようになっていた。
「共鳴した?」
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