第68話 サルバトーレ家襲撃④
「うっ!」
エアリスは膝をつく。
「これが禁書の力?」
日頃の鍛錬で寝起きでも戦えるようになっていたので、強烈な睡魔を抑えながらなんとか意識を保っていた。
エアリスは禁書をとるために女に近づく。
「っ!!」
殺気を感じて後ろにどうにか飛びのいた。
禁書のせいか、いつもより鈍い感じがする。
「それを避けるのか……」
エアリスが先ほどまで立っていた場所には小さい刃物がいくつか刺さっていた。
エアリスを襲撃した人物は男の声で、顔を布で隠し、倒した女と同じような服装をしていた。
「まだいたの!」
正直エアリスは結構ギリギリであった。
禁書を早く閉じてしまわないと膝から崩れ落ちそうで、意識を保っているのが奇跡的だった。
(まだよ私が倒れたらダメ!)
この屋敷で意識を保っているのは恐らく敵とエアリスだけだろう。
(使用者が平気なのはわかるけど、この男が平気なのはなんで?)
エアリスは疑問に思う。
影響を受けない方法を敵側は知っているのではないか?そして、今まで見なかった禁書がこうも立て続けに現れるのは何かあるのでは?
しかし、これ以上は頭が回らず、敵の分析もままならない。
「外面は保ってるが、内心キツそうじゃないか?」
男の声は冷徹に、そして確実に目の前の獲物を仕留める意思を放っている。
「試してみる?」
「小娘……とは言わないぞ?」
男は油断をしていなかった。
(結構ヤバいかもしれないわね)
向かい合う二人。
得物の差も、身体的状況も、油断のなさも全部が男の絶対的優位を物語っていた。
(それでも!)
「いい目だ」
エアリスは背筋がゾクッとした。
鋭利な刃物を首筋に突き付けられたような冷たさが体を包み込む。
(時間を稼ぐ!)
エアリスはこの男に勝つのは無理と判断し、時間を稼ぐことを考える。
男はゆっくりと間合いを詰める。
先ほどの女とは違って、受けに自信があるようだ。
(厄介ね)
後手に回っても切り返せる技術を擁するということだ。間違いなく実力者である。
お互いの間合いに入った瞬間切り結ぶ。エアリスは正面から受けないように必死に受け流す。
「時間稼ぎか!」
エアリスは答えない。
態勢を上手く入れ替え、相手が自由に剣を振り回せないようにする。
「これ程とは!」
男はエアリスの技術に驚いていた。体力的に限界に近いはずなのにこの動き、将来が末恐ろしかった。
大人の力を上手くいなしていたエアリスだったが、流石に受けきれなくなってきていた。
「ここまでのようだな」
男は今までやらなかった大振りを叩き込んでくる。
「っ!」
エアリスはなんとか受けるもののついに木刀が折れてしまった。
「終わりだ!」
凶刃がエアリスの喉元へ向かって放たれた。
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