第63話 お出かけの帰りに
「サーニャさん置いてきて良かったの?」
「せっかくのアシムを堪能したいもの」
「行きたそうだったよ?」
街へ出るときエアリスはサーニャを家に残していた。
「アシムと関われないのよ? 過ごしにくいと思うわよ?」
「そうなのかな?」
エアリスなりに考えてのことなら何も言うことはないが……
凄い笑顔でこちらを見ている。これ以上は突っ込まないほうがよさそうだ。
「今夜は一緒に寝ましょうね!」
「僕と? 前はアイリスと寝てたでしょ?」
「聞いたわよ、アイリスと寝ているんでしょう?」
「ああ。姉上がいなくなって寂しいみたいだからさ」
「私も寂しいのよ?」
「え?」
普段は柔らかな雰囲気で、その中に凛々しさも感じる姉から意外な言葉を聞いた。
「私も学園でアシムと離れ離れで寂しいのよ?」
「確かに」
よく考えればそうだ。新環境になったのは何もサルバトーレの家だけではない。
エアリスのほうがむしろ環境がガラッと変わっている。
「だから家にいる間はいいでしょ?」
「うん。わかったよ三人で寝よう」
「え! 分かったわ! アシム大好き!」
一瞬残念そうな声が聞こえたが、抱き着かれたのではっきりとは見えなかった。
エアリスとアシムは街を回り、買い物もして二人の時間を楽しんだ。
途中下着のお店に入ったときは気まずかったが、周りが気にしていないようで良かった。
おかげで姉の趣味を見てしまったが、この記憶は墓の中まで持っていくと決めた……
「姉上持つよ」
会計が終わった袋を受け取ろうとする。
「大丈夫よ。アシムはすでに両手が塞がっているじゃない?」
「これくらい大丈夫だよ!」
最後の袋を持つ余裕はあった。
「いいわよ、あなたばかり頑張らなくても」
「そうだね」
無理やり持つ物でもないし、アシムは無理に催促をすることはしなかった。
帰路についていると言い争っている声が聞こえてきた。
「アシム! あれユーリ君じゃない?」
「本当だ」
路地裏に入る建物の隙間の前でユーリが人といい争っていた。
エアリスはアシムをちらりと見て、荷物を奪い取った。
「姉上?」
「気になるんでしょ? 話が終わったら聞いてみたら?」
そう言うとエアリスは先に行ってしまった。
せっかくなので、いつ終わるかもわからない言い争いが終わるのを待つことにした。
幸いにも争いは数分で終わり、ユーリが悔しそうな顔で友人の背中を見送っていた。
「どうしたんだ?」
「見てたのか?」
「ああ」
「あいつまた組織で働いてるらしい」
「ん? ユーリの友達にも仕事は紹介したはずだけど?」
「辞めたらしい」
「辞めた?」
給料も結構いい仕事を紹介したはずだ。
貴族の紹介ということで、店でも無碍に扱われたとは考えにくい。
「新しい仕事が肌に合わなかったらしい」
「え?」
仕事があるだけでもありがたいはずだが、まさか盗みの方がいいとなるとは思わなかった。





