第59話 エアリス襲来
「アシム~!」
玄関をアシムが開けるなり、飛びつかれた。
「あ、姉上! く、苦しいです」
決して重いとは言わない。
前世の知識が女性に重いと言ってはいけないと警告していた。
「学園の間は会えないから、今のうちに補給させて!」
「何を!」
「あ~! 癒される~!」
何か学園であったのだろうか、会って早々テンションがおかしい。
「姉上とりあえず中に入って」
王都に来てエアリスは初めて家に入る。
やっとアシムから離れたエアリスは、家をまじまじと見つめる。
「立派な家ね!」
デュラム家に使われていた時もまぁまぁいい家だったが、貴族となるとさらに大きい家になる。
エアリスを招き入れ荷物を使用人に預け、ソファへ座ってもらう。
「姉上学園はどうしたの?」
「今日は外出許可が初めて出る日なのよ!」
学園は入学早々外出の許可は出してくれないらしく、3週間ほどかかったらしい。
「友人はできた?」
「ええ、同室の娘やクラスメイトと仲良くなったわ。今度アシムに会わせたい娘がいるの」
「会わせたい娘?」
「ええ、私たちと同じようにデュラム家に借金をしていた家でね、高利子に苦しんでいた娘なの」
「僕がデュラムを潰したから助かったと?」
エアリスが話したのだろう。
「そうよ。商人の娘だから顔をつないでおいていいんじゃない?」
「姉上がすでに友達じゃないか?」
「あら、あなたも友達になったほうがいいんじゃない?」
「どういう意味?」
「将来領地経営を考えてるなら当然でしょ?」
エアリスはアシムが領地経営に乗り出すと考えているようだ。
「なんで僕が領地を?」
アシム自身もその未来は構想に入っているが、エアリスがどういった考えでその答えを出したのか知りたかった。
「それはもちろん将来あなたはサルバトーレ家を独立するんでしょ?」
現在アシムはサルバトーレ家とは別で貴族位を持っている。
家を継ぐならその地位を返還しなければならない。
アシムとしては悩ましいところだった。
家を継ぐ場合は領地は持てない可能性があるが、サルバトーレ家の貴族位を継ぐのは家を守ることになる。
独立する場合は、家名を変えてサルバトーレ家を出なければならないが、そうなった場合は確実に貴族位が上がっている時になるので、領地を持つ可能性が高い。
「サルバトーレ家を継いでほしくないの?」
サルバトーレ家の息子はアシムしかいないので、継がなければ確実に潰えてしまう。
「忘れたの? 母上が出て行ってもう3年よ?」
「確か5年で帰ってくるって言ってたね」
母親は未だ借金を返すためにハンター業をしているはずだ。
早く連絡をつけたいが、今のところ無理だった。
「母上が帰ってきたら子作りを頑張ってもらうわ!」
8歳の娘は母親に跡継ぎを産んでもらうつもりのようだ。





