第58話 エリゼのお仕事
「アイリス様、マリア様どうぞ」
エリゼはサルバトーレ家で働くことになってから、アイリス達のお世話係になっていた。
子供とは思えない卓越した魔法の鍛錬が終わったところで、タオルと水を用意する。
「ありがとエリゼ!」
アイリスは、エリゼがここに来た経緯を知らないので、ただ新しくきたお姉さんという感じだった。
エリゼはサルバトーレ家にきて驚きの連続だった。
貴族様とは思えないほど勤勉なのだ。
使用人もみなクオリティが高く、かつ屋敷の雰囲気は活気がありながらも貴族特有の圧みたいなのがないのだ。
一人一人が向上心をもって共に戦う戦友のような、仲間意識がとても高いのだ。
メイド長の話によると、ここの使用人はみな騎士団あがりやハンターの経験がある戦闘に精通している猛者たちだとか。
何故そんな人たちが集まったのかというと、ひとえにアダンの人望なのだとか。
ハンターや騎士団は貴族から下に見られている。
貴族が‘‘使う側‘‘なので、そういった意識づけになってしまうそうだ。
騎士団はまだマシな方だが、騎士団退団後は貴族様に雇われることが多いため、どうしても貴族様の顔色を窺うことになるという。
その中でアダンは騎士団から貴族に成り上がったこともあり、戦闘員に対しても平等な対応で皆からの信頼と羨望の眼差しを集めたという。
没落後使用人は全員解雇されてしまったが、サルバトーレ家復活とともに戻ってきた者も多いという。
「アイリス様、マリア様お勉強のお時間でございます」
「うん! ありがとう」
アイリスとマリアは一緒に連れ立って家の中に入っていく。
エリゼは素直にマリアをうらやましいと思っていた。
平民の家では決して出来ない勉強に鍛錬、ここは自分を磨くための最高の環境が整っている。
「夕飯の支度をしなくちゃ」
家主のアダンが帰ってくる前にお風呂の準備や、夕飯の仕込みなどやることは沢山ある。
しかしエリゼは今の環境にも満足していた。
厳しいメイド長も、忙しい仕事も自分が頼りにされていると実感できるのだ。
遊郭で働いていたときは客を取れなければネチネチと言われ、変な客に当たってしまってもそんな人ほど金払いがよく拒否も出来ない。
廊下を歩いていると声を掛けられる。
「エリゼさん!」
振り返るとそこにはアシムとユーリがいた。
「アシム様! おかえりなさいませ!」
「ただいま!」
「ユーリもおかえり」
「ああ」
ユーリはぶっきらぼうに答える。
「エリゼさん仕事のほうはどう?」
「おかげさまで楽しくさせていただいてます」
「それはよかった」
「ユーリと何をされていたんですか?」
「そういえば言ってなかったね」
アシムはみんなに予定を伝えていなかった。
「魔物狩りだよ」
ユーリが答える。
「まぁ! 大丈夫?」
「無理はしてないから大丈夫だよ」
姉として心配なのだろう。
「エリゼさんユーリには慎重にやってもらうから大丈夫だよ」
次回からになるが、護衛兼ハンターを雇う予定だ。
最初は赤字でも、ユーリが育てば黒字になるはずだ。
「わかりました。アシム様も気をつけてくださいね」
エリゼさんの優しさに癒される。
姉さんのエアリスみたいだ。
「それでは夕飯の支度があるので失礼しますね」
「うん。お疲れさま!」
自分たち姉弟を救ってくれた男の子と別れ、メイド業に戻るのだった。





