第48話 アシムの指針
ジャムは生まれて初めて家族以外の男の部屋に来ていた。
しかし、ドキドキや気恥ずかしさなどは出てこない。それもそのはず、お相手は六歳児なのだ。
「なんだ? 何か不満か?」
「いえ滅相もございません」
顔に出ていたのか、六歳児に指摘される。
「何か馬鹿にされてるような気がするな」
「そんなことはありません!」
実際ジャムは馬鹿にしているわけではない。
ご主人様がこの家を建て直したこと、姉や妹の才女ぶりなどこの家が普通ではないことがよくわかった。
しかし、こうしてご主人様を目の前にすると、どうしても小さい子供にしか見えないのだ。
「何を聞いたのかわからないけど、僕はちゃんと子供だからな!」
ご主人様は勘のいい方のようだ。
実際に助けてもらわなければ、全く信じられない話だった。
素直に凄いと思うし、助けられて感謝もしている。しかし、目の前にいるのは六歳児なのだ!
「まぁいいや」
ご主人様は何か悟ったような眼をして、あきらめた。
「部屋に呼んだのは、今夜父上にジャムのことを説明するからその確認だよ」
「確認?」
「ああ、ゲイルにはどこまで話した?」
その内容によっては、対応を変えなければならない。
懸念していることと言えば、アダンがアシムの心配をして、この件に関わるなと言ってくることだった。
「私の村のことと、村の娘たちがお金と引き換えに自分を売って、馬車で王都に向かっているところで魔物に襲われ、そこでご主人様に救われたことです」
全部だった。
まぁ奴隷化を相手側が狙っているということは、分からないだろう。
「わかった、今夜父上の前でも同じような説明をする」
「わかりました」
(ここまできたらいっそ、奴隷の話をしてしまった方がいいのだろうか?)
ユーリ達の話もいずれしなければならないとするなら、早めに話さないとまずそうな気がする。
今夜の話で、何か勘づかれれば動きにくくなるかもしれない。
ジャムとの話も終わり、午前中の日課を終わらせ奴隷商の偵察に向かった。
夜になり、家へ帰る。
奴隷商では昨日聞いた話の通り、村娘達が奴隷化されていた。
個人を部屋に呼び、強制的に奴隷にしていたのだ。村娘が抵抗できるはずもなく、人生を奴隷で過ごすことを強要されたのだ。
(個人的にも許し難いな)
アシムは、あの惨状を目の当たりにして放ってはおけなかった。
(父上やシャルル姫でも裁けなかったときは……)
奴隷の証明を行えれば大丈夫だが、そうならなかった時は自分が鉄槌を下そうと覚悟を決めた。





