表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/189

第46話 アダンの心

「ゲイル!」


アダンの呼びかけにより、現れた男は執事服をこれ以上は無いというような、着こなしをしていた。


「如何いたしましたか?」


この屋敷の数少ない使用人の一人。その中でも、執事長を任せられている責任のある立場だ。


「アシムが連れてきた娘の調査を任せる」


「はっ」


短いやり取りだが、ゲイルはそれだけで主人の意思をくみ取る。


「それでは、失礼します。」


左目につけたモノクルを光らせ、部屋を静かに出ていく。


「ゲイルに任せれば大丈夫か」


椅子に座り、鍛え上げられた腕を伸ばしてコーヒーを取る。


「アシムはサルバトーレ家には珍しく、政治の才があるのかもな」


この時点で自分の部下を欲しがるということは、何かしらやりたいことがあるのだろう。

アダンはアシムを高く評価していた。


「道を踏み外さぬように、私がしっかりしなければ」


母親は未だ旅に出たままだ。呼び戻そうにも、現在居場所を特定できるものはない。

必然的に、親の役目をアダンがこなさなければならない。


「サラに早く知らせられればいいのだが」


行方知れずになってしまっているということは、かなり遠くまで行ってしまったということだ。

そんな妻を責めることはできない、まさかアシムがあれほど稼ぐとは誰も予想できなかっただろう。


「スタンピードを潰したか……」


本人に聞いてもわからなかったが、予想できるのは魔物の大量氾濫『スタンピード』の起きる直前を狩ったのだろうと思われる。


認めてはいるものの、やはり我が子は可愛い子供なのだ。エアリスも小さい頃からしっかりしていたが、最近のアシムは家族を支えるほどの気概をみせている。


それ故に大人として、親として心配になってしまう。アシムは問題なく過ごすのだろうが、親として心配することは許してほしい。


「私は何を思っているのだ」


(親として心配するのを許して欲しいなどと、完全にアシムに頭が上がっていないではないか!)


アダンは自分が家長であると、改めて気合を入れなおした。


(騎士団という自分を活かせる場所がやはり一番合っているな)


領主になってからおかしくなってしまった。

それまでは武力を存分に振るい、国内随一の武闘派貴族として地位を確固たるものにしていた。

それが簡単に崩れてしまうほど、貴族というものは難しい。その貴族にまた舞い戻ってきた不安はもちろんあるが、今度は失敗しない自信があった。武力に注力すればいいのだ。


窓の外に映る月を眺めながら、揺れ動く親心を噛みしめるようにコーヒーを喉に通した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作です!乙女ゲー世界に転生した俺がゲーム知識で最強へと至る道~悪役令嬢が闇落ちするので助けようと思います~

書影を公開しました!画像をクリックで商品ページへ飛びます。
書籍版は細かい加筆修正と、シャルル姫外伝が追加収録されています!
第1巻2020年9月10日発売!
9mf5dsm0fdp898pqbir22wb229ra_o9j_go_oo_a
― 新着の感想 ―
[良い点] 五歳になった途端、前世の記憶を取り戻し、僅かな歳月で没落したて窮地に立たされる家族と家を立て直す。かなりご都合主義な内容ではありますが、主人の成り上がり人生のほんの序章としてはかなり盛り沢…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ