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第41話 村

「じゃあな!」


ユーリはアシムと別れる。

今日、凄い人物と出会った。

この国の姫様だ。


おこがましいことに、ユーリは姫様を数秒間見つめてしまった。

一目ぼれだ。

あんなに美しい女性に会ったら仕方ないと、ユーリは思ってしまう。


家の中へ入る、そこはいつも通り一人の世界だった。


「ここから抜け出せるのかな……」


アシムの前で見るユーリからは、想像できないような弱音が出る。


「俺も、姉貴もこんなクソみたいなことしないで生きていけたらな」


しかし今、その可能性が目の前に転がっている。

美しい女性に会ったことで、ユーリの心は揺れていた。


「自由に生きられない不幸か」


アシムに言われたことを思い出す。


「自由な仕事をして、自由な家に住んで、自由に恋をして」


そのどれもが、今のユーリには欠けていた。


なにも、恵まれた仕事に就きたいわけじゃない。

なにも、大きな家に住みたいわけじゃない。

なにも、一国の姫と結ばれたいわけじゃない。


「人と、他愛無い話をしたいだけなんだ」


自分の仕事は言えない。

自分の住んでいる家が、立派なことも言えない。

好きな人の元に通うことも出来ない。


「こんなんでいいのか?」


飢えないでいられる。

立派な家に住めている。

だけど、そこに自由はなかった。


自分の心の自由が、そこには無いのだ。


ユーリは、一人夕食を食べながら、自分と向き合っていた。





「今日は奴隷商を追っかけるか」


先日、追跡を途中で切り上げたので、今日は決定的な瞬間を見届けたい。


昼からになるが、奴隷商を見張る。


「オーナーを追っかけるか、従業員を追っかけるか」


先日の話を鑑みると、奴隷の調達に行くはずだ。

奴隷は奴隷商にしか扱えない魔法で、奴隷にされる。

その魔法の入手方法は秘密とされていて、噂では国王が特殊なアイテムで、付与できるとか言われている。


「オーナーだな!」


奴隷契約を行うには、多分オーナーが必要だろう。

奴隷契約の魔法は、それだけの価値がある。


暫くすると、少し大きめの馬車が奴隷商店の前で止まる。

建物の中から、オーナーが出てきた。


「お! ついにか」


出発する馬車を追いかける。

街中ではスピードがそんなに出ていないので、アシムの脚力なら余裕で追跡できた。


しかし、街を出てしまったので、距離をある程度あけなければ、遮蔽物がなく見つかってしまう。


スピード的には、超人アシムからすれば問題なかった。


なんとか上手く追跡をして、馬車が静かな村に止まるところまで来た。

馬車を村から見えない所に止めている。


「ここで攫うのか?」


確かに、街から外れた村では、人が居なくなっても騒ぐのは村人だけだ。

王都から結構距離があるので、衛兵が駆け付けたところで大抵間に合わない。


アシムは、静かに村に入っていった。


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