第40話 ユーリ初めての姫
「おい!」
アシムは王城の外壁をよじ登る。
「おい!」
ユーリはアシムを下から見上げる。
「おい! ここ王城だぞ!」
「知ってる! ほらさっさと行くぞ!」
「まさかとは思うが、いつもこうやって入ってるのか?」
「二回目だ!」
「前科ありかよ!」
そうツッコミながらも、ユーリはちゃんとついてくる。
「約束してるのか?」
「してたらこんな入り方しないって!」
アシムは地面に着地する。
「よく警備にみつからないな」
こんな簡単に侵入を許すような王城ではないはずなのだが。
「慣れだよ!」
「俺が言えたことじゃないが、慣れちゃいかんだろ」
六歳に侵入を許す警備が悪いわけではないのだ。
アシムが気配察知でうまいタイミングを計っているのだ。
「こっちだ!」
アシムが駆け抜ける。
ユーリも慌てて追いかける。
「ストップ!」
アシムにぶつかりそうになるが、ぎりぎりで止まる。
「あの警備が角を曲がった瞬間あそこまで走るぞ!」
ユーリは警備を覗き見る。
「行くぞ!」
間髪を入れず、走り出す。
「くっ!」
流石というべきか、ユーリは何とかついてくる。
「ストップ!」
今度は、危なげなく止まった。
「ここだ」
アシムが上を指さす。
「窓?」
「あそこまで登るぞ!」
そういうと、アシムは窓に小石を投げつけ、窪みを利用して壁をよじ登る。
「もう、どうにでもなれ!」
ユーリは考えることをやめ、ついていく。
会わせようとしている人物が、王城にいるほどの人物ということだけしか予想ができない。
窓が開き。アシムとユーリが中に入る。
ユーリは、固まってしまった。
中に居たのは、絶世の美女と見紛うほどの女性がいたのだ。
「アシム! またお前は!」
傍にいる護衛の女騎士がアシムにご立腹のようだ。
「いや、門番の人が通してくれないんだもん!」
「事前に言ってくれれば、門番に話を通しておく!」
「次からそうする」
「ああ、そうしてくれ」
「約束してない場合は、許してね!」
「約束できないほどの緊急な事態なら許してやる」
断固拒否してくると思ったが、案外理解を示してくれた。
「それで?」
「この前助けると言っていた子を連れてきたんだ、後ろ盾となってくれる人物を確認したいっていわれたからね」
「そうか、君は?」
女騎士に話しかけられる。
「ユーリ……」
「ん? なんか元気なくなってないか?」
アシムにツッコまれる。
「ユーリ君って言うのか、私は騎士団副団長のリーゼロッテだ」
「私は、バスタル王国の姫シャルルよ」
「姫!」
ユーリは驚いている。
「どうだ? この人たちが協力してくれるってさ! 不満か?」
「いや、十分だ」
「そうか、それはよかった」
「ユーリ君、良かったら話してくれませんか?」
シャルル姫に話しかけられて、ユーリの顔が真っ赤になる。
「お!」
アシムがにやりとした。
「こちらに」
リーゼロッテが椅子を引いて促す。
全員が席に座り、ユーリの話を聞いた。





