第4話 アシムの才能
自分は魔法が好きだ。
それは、前世の知識が蘇る前も好きだった。
しかし今は前世の経験に引っ張られ、魔法に対するワクワクが止まらない。
「先生今日は何をやるんですか!」
「アシム君は今日も元気でよろしい」
先生はおじいさんというような、白い髭を生やしながらも、背筋が伸びていて力強さを感じる。
「では、今日はイメージの強化について学びましょう」
「イメージの強化?」
「そう、アシム君は既に2種類の魔法が使えますね?」
「はい、火と水です」
「火の魔法を全力で使ってみて下さい」
以前にも最大火力をみるために全力で使ったことがある。
その時は掌大の大きさの炎だった。
「では行きます」
実習なので外だ。室内ではもちろん物が壊れたり、床や壁をボロボロにしてしまうので一般的な練習場所だと言える。
自分の中でイメージを固める。
「あれ?」
普通だったらここから呪文を唱え、魔法を発動させるのだが、前世の記憶が無詠唱でいけると訴えかけている。
頭の中が鮮明な黒で塗りつぶされる。
「どうしましたアシム君?」
先生の声と同時に、掌の上に炎が灯った。
魔法の発動者に被害はないのだが、炎の様子がいつもと違った。
「アシム君! 今無詠唱でしたね!」
先生が驚いている。
無詠唱を使える人はいなくはないが、ごく一部の人間にしか使えない。
「それに、その炎はなんですか?」
発現した炎は、頭の中を埋め尽くしたものと同じ黒色をしていた。
「あれ? 何か黒い炎をイメージしたら出ました」
「イメージの話をまだしていないのですが……そうですね、どんな炎か確認したいので、訓練用の人形に撃ってもらえますか?」
「はい」
先生の言う通り、人形に撃ってみる。
「あれ?」
人形に当たったが爆風も起きず、炎が纏わりついているが、燃えていない不思議な現象が起きていた。
「これは……少しアダンとお話があるので授業は中止します、その魔法はくれぐれも使わないように」
先生がそれだけ言うとさっさと行ってしまった。
「お兄様?」
アイリスは何もしないまま終わってしまった、何か申し訳ない。
「自習しようか、あの魔法使わなければいいみたいだし」
「自習?」
「ああ、自分で練習することさ」
アイリスは3歳だ、普段が3歳とは思えない言動や理解力なので、分からない言葉を使ってしまった。
「はい!」
元気の良い返事をもらった。
アイリスは本当に天才だと思う。同じ年代でこんなに頭のいい3歳など見たことない。
「普通の炎も使えるか試してみよう」
色々試したい事ができたので、順次試すことにした。
「お、お兄様凄いです!」
なんと、火、水だけでなく、風、土、の4元素魔法を使えるようになっていた。
「おお!」
しかし魔法を使い過ぎた反動で、魔力切れを起こしている。
「お兄様大丈夫ですか?」
「ああ、疲れたから少し休ませてくれ」
「お部屋にいきましょう」
妹に連れられ、部屋で休むことにした。
「ふぅ、色々できることは分かったけど、魔力量が足りないな」
この年齢ではかなりある方だが、4元素魔法を自由自在に使いまくりたいので、魔力量を増やすのは課題だ。
「デュラム家には秘密にしておきたいな」
父親次第になってしまうが、デュラム家が知ればこの力を利用しようと、デュラム家で馬車馬の如く働かされる未来しか見えない。
「とりあえず、昼まで休むか」
魔力を回復させるために一度寝ることにした。