第38話 奴隷商
アシムが追跡している男が、とある店に入っていった。
「奴隷商か」
先程の男との話を聞く限り、奴隷の発注だろう。
「オーナーは居るか?」
店員を飛ばして、オーナーを呼びつけている。
「お客様オーナーは、ただいま調整中でして」
「お前新人か?」
「はい、左様でございます」
「経験のある店員に、ユルゲンが来ていると伝えろ」
「かしこまりました」
新人の店員は、渋々といった感じでお店の方に引っ込んだ。
暫くすると。
「ユルゲン様! お待たせいたしました! 応接室の方にオーナーを呼んでおりますので、どうぞ中へ」
ユルゲンと呼ばれた男が店の中に案内された。
「奴隷商とズブズブだな」
優先されて面会できるという事は、そういうことなのだろう。
「ん~、正面突破?」
中に人は多いだろうから、外から気配を探って探すのは無理そうだ。
丁度、お店の人が居ない今入るしかない。
「見つかったら、子供の悪戯で終わらそう!」
いざという時は、子供の特権を使って大丈夫そうなので、正面から入る。
玄関から入ると正面に階段があり、扉の横に呼び鈴が置かれていた。
「右と左にも扉か」
見た目的に、一階にある扉は従業員が使っていそうなので、階段を上る。
その先は左右に分かれており、アシムを悩ます。
「取り合えず、左!」
アシムが左へ進むと、丁度人の気配が扉の向こうからした。
「やば!」
慌てて周りを見る。
視界に入った窓が開いていた。
「よっと!」
窓から外に出る。
何かが突き刺さる音がする。
そして、扉が開いて、人が出てくる。
先程の新人のようだ。
一階に降りて、従業員が使っているであろう扉を開けて、入っていった。
「あぶね!」
壁に短剣を突き立て、ぶら下がりながら冷や汗を掻いていた。
「木造で助かったー!」
基本家は木造なのだが、貴族の屋敷や、王城は石造りの場合が多い。
窓から中へ入り直し、急いで扉に向かう。
今度は無事、何もなく進む。
「どこかな?」
気配を探るが、遠いのか面会をしているであろう二人組は感じ取れない。
「こっちは人が多いな」
十人の気配を感じる場所がある。
「奴隷かな? 多いな」
犯罪奴隷が主流の奴隷商は、基本奴隷契約を結ぶのを生業としており、奴隷を売り物として扱うのは珍しい。
「という事は、応接室があるとしたら反対か?」
扉を間違ったらしい。
「見に行ってもいいかな?」
アシムは、奴隷を見たことが無かったので、興味をそそられた。
しかし、今は組織の弱点を探している途中だ。
「が、我慢!」
なんとか我慢して、来た扉から出て、反対側の扉に入った。





