第35話 侵入者
「アシム! 最初に言わせてくれ、王城へ忍び込むのは犯罪だぞ?」
「う! す、すみません」
最近上手くいっていたせいか、調子に乗ってやり過ぎてしまったようだ。
「今回は許すから、次から気を付けてくれよ?」
「はい」
そこには、親に怒られてシュンとしている子供のようなものがいた。
「ふふ! アシムでも反省をすることがあるんだな」
シャルル姫と、リーゼロッテが笑う。
「僕だって、悪いことしたら反省するよ……後悔はしないけど」
「え? 最後の方なんて言ったんだ?」
アシムは、小さい声でぼかした。
「次に生かすっていったのさ」
「そうか、良い心がけだ」
リーゼロッテはちょろかった。
「それで?」
リーゼロッテが何か用かと視線を投げる。
「ちょっと助けて欲しくてさ」
シャルル姫とリーゼロッテが互いに目合わせる。
「ん? どうしたの?」
「いえ、まさかあなたが助けてくれと、言ってくるとは思いませんでしたわ」
「この間も助けてもらったじゃん!」
「それはそうですが」
「シャルル様は、お前を高く買ってるんだぞ?」
「僕を?」
突然の誉め言葉に、悪い気はしない。
「そうですわ、あのサルバトーレ家の嫡男にして、わずか6歳でデュラム家と対峙した人物よ?」
当然でしょと、言いたげにウィンクをする。
「それは光栄だな、それで相談の内容なんだけど」
アシムは話すために、ひと呼吸置く。
「今回も、後ろ盾になってほしいんだ!」
「後ろ盾? 何をするつもりだ?」
「闇組織とちょと揉めそうなんだよね」
「お前は一体何をやっているんだ!」
リーゼロッテが驚きと、怒りを現した。
「お前がいくら強いからと言っても、個人で組織と揉めるのがどれだけ危険か分かっているのか?」
「もちろん、正面から殴り合おうってわけじゃないよ?」
「それでもだ! 目を付けられるというだけで危険だ!」
「助けたい人がいるんだ!」
「助けたい人?」
「何も、ただ闇組織が悪と決めつけてちょっかいをかけたわけじゃないんだ」
「そうか、それは大切な人なのか?」
「昨日会ったばかりだよ」
「話を最後まで聞いたほうが、よさそうだな」
リーゼロッテは眉間に手を当てて、椅子に座る。
「お前も座れ」
「それじゃあ失礼して」
アシムは、少し高い椅子の上に上ると、ちょこんと座った。
「これは、街でスリをしている子供を見つけた時なんだけどね」
アシムは、最初から詳しく話す。
「なるほど、それでその姉弟を助ける流れになったと?」
「うん」
多少話は変えたものの、概ね真実を話した。
「それで、いざとなったら王家引きとりにしろと?」
「まぁ、そういうことかな! 闇組織に払う手切れ金は僕が用意するから」
つまりは、王家の使用人として迎え入れればいい話なのだ。
もちろん、闇組織にとっては面白い話ではないので、いくらかのお金が必要になる。
「分かりましたわ」
シャルル姫が了承を示してくれた。





