第32話 説得
「ゴホン! つまりだね、武力行使をされても僕がいると大丈夫ということさ!」
「相手は組織だぞ?」
「サルバトーレ家だぞ?」
「ふざけてんのか?」
「まぁまぁ、信用できないって言うなら試してみる?」
アシムは、挑発的な笑みを浮かべる。
「そういうことじゃねぇよ! 一回や二回相手を迎撃できても意味ねぇんだよ! それともお前が専属の護衛にでもなってくれんのか?」
「それいいね!」
「あ!?」
ユーリ君はちょっとキレそうになった。
「だから、専属の護衛だよ」
「サルバトーレがずっと護衛につくってのか? そんな金は払えねえぞ!」
流石に騎士団に簡単に入れるような猛者の護衛は高いし、普通、仕事上無理だ。
「払えないなら働け!」
「現状の稼ぎ以上は無理だ!」
「なら、条件を出そう」
「条件?」
「ああ、僕に雇われろ、福利厚生は護衛付きだぞ?」
「サルバトーレに雇用される?」
「ああ、僕の部下になれ! もちろんスリとか犯罪からは手を引いてもらうぞ?」
「サルバトーレ家の小間使いになれってか?」
「今の状態よりいいだろ? ちなみにうちは男爵家だぞ?」
「貴族に雇われるのは、願ったり叶ったりだが、今の組織が黙ってはいそうですか! て言うと思うか?」
「交渉するさ」
「法外な要求をされるぞ?」
「無策で行くと思うか? その前に下調べくらいするさ」
「姉貴は?」
「もちろん家で、メイドとして働いてもらうかな! 金払いはいいぞ?」
父が騎士団に入ったことで、収入も安定して、アシムの稼ぎもあるのでそこらの貴族より裕福だった。
もちろん、働いてもらうので、しっかり稼いでもらうが。
むしろ、めちゃくちゃ稼いでもらう気満々である。
「それはありがたいが、俺にそんな価値ないぞ?」
「いいや! ユーリ君! 君はきっと輝く場所をうちで見つけられる!」
「なんだよ、輝く場所って……」
本当に可能なのかと、ユーリの感情が揺れ動いているのがわかる。
「まぁ、僕に任せておきなって!」
「任せて失敗しましたじゃ、シャレにならんぞ?」
「そんなに心配か? なら僕のバックについている人を紹介しよう」
「お前のバックに?」
「ああ、きっと君も納得する権力者さ!」
「なんだか、お前の方が、闇が深そうなんだが」
「答えは、その人に会ってからでいいからさ」
「わかった、それで良ければ話に乗ってやろう」
「ありがとう、じゃあ今日はもう無理だから、後日調整するよ」
「わかった、だがそれが確認できるまで今の仕事は続けるぞ?」
「オッケー! それと君の二人の友達はどうする?」
「お前! 何故それを!」
「言っただろう、下調べくらいするさ」
「ああ、そうだったな」
ユーリは観念したように、両手をあげた。





