第31話 裏の恋愛事情
「こことは別の場所を牛耳ってる、闇組織のリーダーに見初められてな」
「王都で闇ギルドが活動できるのか?」
「汚ねぇ仕事を必要にしている奴も多いのさ」
この世界では、現行犯などで捕まえない限り、犯罪の証拠を掴むのは難しい。
文書などが残っていれば証拠になるが、それさえも偽造の可能性があるため、立証は難しい。
そこで、裁けない犯罪者の始末など、闇組織に依頼が行くのだろう。
「それで?」
「そのリーダーっていうのが、恋人がいてな」
「浮気?」
「多妻を持てるのは基本貴族だけだろ?」
この国では、多重結婚が認められているが経済的な理由や、世継ぎの事情などで、貴族と王族しかしなくなっている。
「別に、そう決まっているわけじゃないだろ?」
「そう思ってるのは貴族様だけだ。一般国民は、一人と恋愛結婚が普通なんだよ」
「そうだな」
ユーリの言っていることは正しい。
「それでだ、相手の恋人が根っからの闇組織の娘なんだ」
「物騒なことになりそうな予感がしてる」
「正解だ、その恋人さんが姉貴を捕まえて、国外に売り払おうと画策してるらしい」
「国外って……奴隷か?」
王国内で奴隷はいるが、犯罪奴隷しか認められておらず、そういった奴隷は基本鉱山送りだ。
「ああ、最悪殺される可能性もある」
どうするかは、相手のさじ加減といったところなのだろう。
「そんな奴のところに行ったら十中八九無事じゃいられねぇ。だから別の闇組織に匿ってもらっているのさ」
「なるほど、それで盗みや、遊郭で働いていると?」
「ああ、そうだ」
「よく匿ってくれたな? 相手の組織と対立が深まるだろ?」
「元々激しく対立してる相手だ、俺たちを匿って起こる火種なんざたかが知れてる」
「なるほどね」
「さぁ! ここまで話したんだ坊ちゃんよ! どうにかできるのか?」
アシムをどこかのお偉いお家の子供と思っているらしい。
間違ってはいないが……
「サルバトーレ家って聞いたことあるか?」
「あ? 昔活躍したか、何だかは聞いたことはあるぞ」
サルバトーレ家は隣国が攻めてきたときに、辺境を守っている領地に素早く駆けつけ、少数で相手を抑え続け、絶望的な状況を援軍がくるまで耐え続けた伝説として語り継がれている。
あの防衛がなければ、国の三分の一は取られるほどの大打撃が予想されていた。
「アシム・サルバトーレだ! よろしく!」
アシムは、家名を交えた自己紹介をした。
「アシム・サルバトーレ?」
ユーリはビックリしたような顔を……していなかった!
「だからなんだよ?」
「へ?」
アシムがビックリした顔になった!





