第3話 才女の妹
「エアリスとアイリスを許嫁に?」
「ああ、うちの息子の第2、第3夫人にと思ってな」
父は表情に出さないように考える顔をする。
「デュラム家との絆も絶対的なものになると思うがどうかね?」
貴族ではない家から嫁ぐのは相当いい話なのだが、サルバトーレ家は普通の平民ではない、最強の平民なのだ。
しかし、借金の件もあり断れない。
「ええしかし、いきなり許嫁とは」
貴族同士の協力関係を強固にするには有効だが、平民との結婚は貴族側に得はない。
完全にサルバトーレ家を配下に置いておきたい、という下ごころが見える。
「そうですな、まぁ無理にとは言いません。私は身内になれるなら、もっと親密な関係になれると思っただけですからな」
借金の請求はいつでもできるんだぞと、脅しているようだ。
もしそうなれば、貧困生活に質を落とさない仕事ぶりが求められる。
「そうですな、せめて娘が学院を卒業するまで考えさせてくれませんか?」
「中等部卒業まで、ですな」
「ありがとうございます、それまでには娘にも説明ができそうです」
「そうですな、いやぁめでたい」
「本当ですな」
借金を返せないのを分かっているので、この婚姻はほぼ決まったものだった。
◇◆◇◆◇◆
「昨日のことか」
姉に言われて、昨日のことを思い出していた。
「わざわざ俺の誕生会に言いに来るのは、嫌がらせだな」
昨日までは何も思っていなかったが、今日からは違う。
「僕がそうはさせない!」
一人決意を固める。
幸いなことに、剣術も才能があったようだ、姉には勝てなかったが剣術を習っている期間の差が出ているようだ。
「お兄様! 先生がいらっしゃいましたよ!」
剣術の次は、朝食を食べて魔術の勉強に入る。
「ああ、今行く」
部屋の外で待っている妹の所にいく。
姉は魔法の才が全く無かったので、基礎を習って終わりだったらしい。
妹のアイリスは、3歳にも関わらず既に魔法が使える。
普通は天才と言われていても5歳が早い方らしい。
かくいう俺も4歳で魔法を使えた天才の一人なのだが、妹に越されてしまった。
剣術では姉に勝てず、魔法では妹に負ける。
「男の威厳的に、大丈夫かな?」
しかし、これからは努力すれば結果がついてくるという知を持っている。
前世に比べれば遥かに恵まれた才能だ、悲観する必要はない。
「行こうか」
「うん」
天使のような笑顔で癒してくれるアイリスを連れ、先生の所へ向かう。
「やっぱ、僕がなんとかしないとな」
妹の笑顔を見て、より一層自由に生きてほしいと思った。
「お兄様何かいいました?」
「いや、何でもない」
借金の犠牲にはしないと誓いながら、妹の手を握った。