第29話 友達の家に向かいます
「それでね! 今日お友達になったの!」
「へぇ、そのマリアっていう子と?」
「うん! 魔法教えたら、倒れちゃったんだけど」
今日のアイリスは友達ができて、ぶっ倒したようだ。
「大丈夫なのかい?」
「うん、さっき起きて大丈夫だった」
「そうか、アイリス。その子心配だから一度先生に相談してみよう」
魔法を使って倒れたなら、魔力枯渇の可能性が高いので、明日先生に聞いてみてから医者に行くか判断することになった。
「アシム、アイリス。」
アダンが二人を呼ぶ。
「はい」
「明日、刑が執行されることになった」
「そう、ですか」
アイリスも理解しているのか、表情を変えない。
「見に行くか?」
アシムは、アイリスの方を見る。
「いえ、明日は用事もありますし、午前中はいつもの通り鍛錬をしたいと思います」
「そうか、ならいい」
アダンも思うところがあるのだろう。それ以上は、何も言わなかった。
アシムがそう答えたことで、アイリスの答えも自ずと決まっていた。
「お父様! 鍛錬をマリアも一緒にさせていいですか?」
「そうだな、あちらの親御さんに許可を取ってきたらいいぞ」
「やったー!」
「アイリス、許可が取れたらだぞ?」
既に、一緒に鍛錬をすることが決まったような喜び方だ。
「はーい」
夕食も終わり、それぞれが床につく。
「お兄様……」
アイリスがついてくる。
「おいで」
アシムが呼ぶと、嬉しそうに横にならんだ。
「僕も二年後には、学園に入学するから、それまでには一人で寝られるようにするんだよ?」
「はい!」
わかっているのか、いないのか、判断がつかなかったが、可愛いのでよしとする。
☆
「お兄様! お疲れさまでした!」
「うんお疲れ!」
鍛錬を終え、午後は出かける準備をする。
「お兄様、今日もお出かけですか?」
「ああ、すまないな午後の勉強もしっかりやるんだぞ?」
「はい! あ、今日はマリアちゃんのお家に行くので、お休みです!」
「そうか、先生には悪いけど休むか」
サルバトーレ家の家庭教師は、エイバル先生が、魔法と兼任している。
先生は、離れに住んでもらっているので、そこまで行って休む旨を伝える。
「そうですか、まぁ君達は基礎はしっかりできていますから大丈夫でしょう」
あっさり了承してくれた。
「アダンには許可は取ったのですか?」
アシムは、ここ数日出れないことを言ってあるが、アイリスは、急遽休むことになったのだ。
「いえ、でも昨日の夜、出かける用事の話はしてあるので大丈夫だと思います」
「そうですか、なら事後報告でもいいでしょう」
許可も取れたのでアシムは、心置きなくユーリの家に向かうのだった。





