第26話 追跡(ストーカー)
文字数短めになります。
幸い、階段を降りる時に、人には出会わなかった。
しかし、降りた先に隠れるようなものはなく、見つかる危険性は、まだ高かった。
(複数の人の気配だ!)
扉を見つけ、中から複数の気配を感じる。
流石に、中を確認するわけにもいかないので、通路を進む。
すると、すぐ隣に部屋があり、中から人の気配は感じなかった。
(ちょうどいい! 中に入ってみよう)
うまくいけば、隣の部屋を覗けるかもしれない。
部屋へ侵入する。
中は、倉庫なのか、箱がいくつか置かれていた。
壁に耳を当ててみる。
「薄いけど……」
声は聞こえるけれども、ハッキリとは聞こえない。
「確か、振動で音は聞こえるんだったな」
知識として、知っていることを試してみる。
「お! 聞こえやすい!」
風魔法で、壁から伝わってくる音を増幅してみた。
「そうか、ガキどもは順調か」
「ああ、ユーリが特に稼いでくるぜ」
「そうか、ユーリが優秀なら、こっちの仕事もさせてみるか」
「仲間にするんで?」
「もしかしたら、将来このファミリーの中心になるかもな!」
「ははは! まさかアルダラファミリーに、ガキが入るとは思いませんでしたぜ!」
話しているのは、男二人組のようだ。
ガキを仲間にする、ということは、あのスリをしている子たちに、さらになにかやらせる気らしい。
(最初は、おばさんの財布を、取り戻す目的だったんだけどな)
興味が湧いて調べ始めたら、それどころではなくなってきた。
(戻るかな)
本当は、どんな組織なのか調べたいが、遅くなると人が集まる可能性があるので、退散することにした。
部屋を出て、階段を上る。
隠し扉を抜け、倉庫から出ようと扉に近づいたとき、店に人が入ってくるのを感じた。
(やば!)
お店の人でも、組織の人間でもまずい。
急いで樽を動かし、隙間を作って隠れる。
そして、人が入ってくる。
(組織の人間か?)
お店の人なら、隠し扉にはいかないだろう。
「クソッ!」
機嫌が悪いのか、男が悪態をついた、次の瞬間。
男が樽を蹴飛ばした、床を転がり、蓋が外れ中の酒がこぼれる。
(あ、危ねぇー!)
蹴られた樽は、運よくアシムの隠れている樽の隣だった。
男は、悪態をつきながら、隠し扉に入っていった。
なんとかやり過ごしたアシムは、急いで店をでる。
「ふぅー! 危なかった! そろそろ人が集まる時間だったかもな」
時間的には、夕方になる頃だ。
「もう一回戻ってみるかな」
最初の建物に戻ってみることにした。
☆
「いない」
あの子供たちが残っているかと思って、戻ってみたが、既に誰もいなくなっていた。
「家行ってみるか」
ユーリという子の家は、割れているので向かってみる。
「お!」
家に明かりが灯っていた。
「ちょっと覗くだけ……」
少し罪悪感を持ちながらも、ユーリという子を知るために、観察をする。
覗くために、家に近づこうとしたら、扉が開いた。
「じゃあ、行ってくるから! 夕飯は火を通して食べるのよ!」
慌てて建物の陰に隠れる。
出てきたのは、女の人だ、一緒に住んでいる人だろう。
この人に興味が湧いたので、後をつけてみる。
決して、美人だからホイホイついて行ってるわけではない!
何軒か通り過ぎて、繁華街に出た。
女の人は、その繁華街のある店に入っていった。
「ここって」
どうやら女の人は、夜のお店で働いているようだった。
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