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第25話 怪しい酒場

姉が王都に来て、出てきていませんが、学園が全寮制のためです!


「いないか……」


昼間なのに暗い部屋を進む。


隙間から入るわずかな明かりを頼りに進む。


「そろそろ来るはず」


そう、アシムは昨日の怪しい人物達が出入りしている、建物に侵入していた。


「屋根裏ならバレないはず」


アシムは、ホコリを我慢するために、口元に布を巻いていた。

しばらく潜んでいると、下の階から音が聞こえた。


(きたな……)


人が二階へ上がってくる。

アシムが居た部屋とは、違う部屋へ入ったので、アシムも移動する。


(ここか)


明かりの着いた部屋の天井裏に、到着する。

部屋を覗くと、昨日の子供がいた。

しばらく何もせず、椅子に座り、時間を潰しているようだった。

すると、さらに人が入ってくる音がした。

その人物は、この部屋へと入ってきた。


「成果はどうだ?」


子供は無言で、盗んできたであろう、金品を机の上に出す。


「おお! 今日は一段と捗ってるじゃないか!」


子供は終始無言を貫いている。


「他の連中はまだか?」


男は気にした素振りもなく、子供の態度を流している。

子供は、またも声を出さず、コクリと頷く。


「まぁ、てめぇの稼ぎがほとんどだろうが、あいつらもちゃんと育てろよ?」


そう言うと、男は椅子に座り、タバコを吸い始めた。

窓を開けていない部屋だが、お互い気にした素振りはなかった。


「お! きたか」


そう言うと、部屋に昨日も見かけた子供が、二人入ってきた。


「成果は?」


男は上機嫌に聞く。


「ちっ! こんだけか! お前らユーリに感謝しろよ?」


あの子供の名前はユーリというらしい。


「今日は機嫌がいいからな! ほら」


その稼ぎの中から、いくらか渡される。


「じゃあな! 奴らに絡まれたら、助けてやるから呼べよ」


そう言って男は、部屋を出た。


「ふぅ、ユーリありがとう」


「気にするな、こんなことできない方がいい」


「そうだな……でも、できなきゃ殺されるだろ?」


「ちっ」


ユーリという子供が、初めて感情を表した。


「ご、ごめん! 僕があんなことしなければ……」


気の弱そうな男の子が謝る。

ここで、会話を聞きたいのは山々だが、この子達よりも、裏で動いている大人が気になった。


(あっちを追うか)


アシムは、外に出た大人の男を追いかけることにした。

屋根裏から、窓を使い外にでる。


(いた)


男は、建物を出たばかりらしく、近くにいた。

アシムは、屋根にいると目立つので、一旦下に降りて、追跡を開始した。


(案外普通の場所だな)


路地裏や、スラム街を行くのかと思ったら、意外と表の街並みに出た。

そのまま追跡をすると、一軒の酒場に入っていった。

流石に、子供一人で酒場に入ると怪しまれるので、外の窓から覗く。


(あれは!)


昼間で、まだ営業もしていない酒場のカウンターへ向かっている。

店の人も居らず、滅茶苦茶怪しかった。

男は、そのままカウンターに入り、後ろにある扉を開けて入っていった。


(いけるな)


見た所、人もいないようなので、酒場に入る。

扉に耳を当て、向こう側の気配を探る。


(よし)


人が居ないのを確認し、扉を開ける。


(ん?)


そこは、お酒などのストックを置いておく場所らしく、倉庫になっていた。

しかし、倉庫内に男の姿はなく、アシム一人である。


(ん~? 確かに男が入っていったよな? 隠し扉か?)


この部屋にいないという事は、この一つしかない扉で出るか、他の隠し扉などしか考えられない。


(ん?)


酒場に人が入ってくる気配がした。


(仲間か?)


明らかに普通ではない、行動をしている男の仲間か、この店の従業員しかいないだろう。

こちらに近づいてきたので、アシムは急いで樽の裏に隠れる。


すると、すぐに人が入ってきた。

その人物は、そのまま奥まで行き、壁を横にスライドさせた。


(やっぱ隠し扉か)


十中八九よからぬ組織の隠れ家だろう。


(流石にあそこに入るのは危険か?)


アシムは考える、そもそも見知らぬスリをしている子供に、興味を持っただけだ。

最初は、その子供を捕まえて、説教する予定だったが、途中から事情が変わってしまった。


(深入りすべきか?)


子供を利用し、盗みをさせているかもしれない組織だ。

放っておくと、多くの子供が利用されるかもしれない。


(よし! せめて決定的証拠を掴もう)


そうすれば、アシム一人で解決する必要はなく、騎士団の父親にも頼める。

アシムは、指針を決めると、行動は早かった。


隠し扉に近づき、横にスライドさせ、開ける。


(地下か)


扉の向こうは、地下への階段があり、一本道だった。


(ここで人が来たらアウトだな)


遭遇しても、負ける気はないので、大丈夫なのだが。


(善は急げだな)


とは言え、バレないのが一番なので、階段を急いで降りることにした。


(待ってろよ! 悪党ども!)


アシムは、自分が正義のヒーローになったかのような気分になり、意気揚々と降りた。

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