第24話 天才妹の遊び
「そろそろヤバいな」
アシムが建物を監視してから、大分時間が経った。
「父上が帰ってくる前に、帰らないと」
そろそろ時間的に、厳しくなってきた。
観察をしていると、この建物に二人の大人が出入りし、先ほどの子供と合わせてさらに、二人の子供が入っていった。
「これは、子供に犯罪をやらせている可能性があるな」
スリだけでは、済まないかもしれない。
「そろそろ帰るか……」
残念な気持ちを呟きながら、建物の前を去ろうとする。
「おや?」
タイミングが良かったのか、最初追いかけた子供が出てきた。
「少しだけ」
子供の後を追うことにした。
するとその子供は、辺りを警戒しながらも、軽い足取りで道を進んでいった。
ついて行くと、路地から表の道へ出ていった。
周りを一度見渡し、フードを取る。
中性的な顔立ちをしており、男か女かわからなかった。
そのまま行くと、店の前で止まる。
薬屋のようだ。
店から出てくると、袋を持っていた。多分薬だろう。
そこから暫く歩くと、一つの家に辿りついた。
「結構立派な家じゃないか!」
犯罪に手を染め、お金を稼がなければいけないような家には見えなかった。
流石に、家の中を覗くと、バレるので今日はここまでにする。
「時間もヤバいしな」
家に戻る前に、財布を取られたおばさんの店に行く。
「おや? あんたお昼の」
「ハイ! 財布!」
「え! どこで見つけたんだい?」
「僕と同じくらいの子供がさ、持っていくの追いかけたの」
「アンタ、ありがとうね!」
お礼に、お店にある果物を貰った。
辺りも暗くなってきたので、そのまま帰る。
家の前で、バッタリ父親にあった。
「アシム! なんだ今帰ったのか?」
「父上! 今日は暗くなるまで働いたんですか?」
「ああ、ちょっとな」
仕事でなにかあったのだろう。
「それより、お前はどうしたんだ?」
「ちょっと武器屋を回っていたらつい」
苦笑いで誤魔化す。
「あまり遅くなるなよ、王都とはいえ、絶対安全ではないからな」
「はい!」
「アイリスはどうした?」
「先に帰ってもらいました」
「そうか、アイリスなら大丈夫だろうが、あまり家に一人にさせるなよ」
「はい、気を付けます」
「うん、では夕飯にしようか」
「はい!」
父と共に、家へ入る。
「お兄様! お父様! お帰りなさい!」
「ただいまアイリス」
妹天使が出迎えてくれる。
「ごめんなアイリス、一人で大丈夫だったか?」
「はい! お人形さん作ってました!」
「人形? アイリスは裁縫をできるとは知らなかった」
「はい! お兄様に見てほしいのです!」
「うん、いいよ。どこにあるの?」
アイリスは、手を掴みアシムを先導する。
家を出て、庭に出る。
「これです!」
なんと、人形というのは、土魔法で作ったゴーレムだった。
「ア、アイリス! 人形が動いているんだけど?」
「はい! 動いて欲しいな~、ってお願いしたら動きました!」
我が妹は、やはり天才だった。ゴーレムの自動化は、一部の天才魔法使いしかできない。
「これを作って遊んでたのか?」
「はい! こうやって遊んでました!」
おもむろに、空に手をかざし。
「ウォーターレイン!」
上から水が降ってきて、人形たちに直撃する。
「鍛錬で使ってたのか?」
「はい! 動いてる相手に効果的な魔法を試してました!」
流石サルバトーレ家の娘である。
「そうか、あの人形どれくらい強い?」
「ごめんなさい、まだ動くのが精いっぱいなの」
妹がウルウル目で、謝ってくる。
「いや、アイリスは凄いぞ! ゴーレムの自動化なんてなかなか出来ることじゃない!」
「本当ですか?」
俺達兄弟は、他の人の魔法を見る機会がない。サルバトーレ家の人の魔法や、剣術ばかりを見ているので、自分が優れているとは思えないのだ。
「本当だぞ? 明日先生に聞いてみるといい」
エイバル先生を王都に呼んでいた。
アイリスが、学園に通う年齢になるまで、住み込みで働いてもらうことになった。
「はい!」
もう気にしていないのか、アシムの手を取り、家の中へ戻る。
夕飯も家族で取り、騎士団の話などを聞けて、なかなか興味深い内容だった。
「それでは、お休みなさい」
「お休み」
「お休みなさい!」
それぞれが、寝る準備ができており、後は寝るだけとなった。
部屋の前にくると、アイリスは自分の部屋の前ではなく、アシムの部屋の前に止まった。
「お兄様! 今日は一緒に寝てもいいですか?」
引っ越しをしたばかりで、寂しいのだろうか。
「そういえば、いつも姉上と寝てたっけ?」
アイリスはいつもエアリスと寝ていたので、一人では寂しいのであろう。
「いいよ、おいで」
部屋の中に妹を招き入れる。
「ふふー! お兄様のベッドー!」
アイリスのテンションが、上がっている。
「ほら、場所開けて! 眠れないよ」
アイリスが、ゴロゴロするので、入るスペースがない。
「はーい」
頼めば言うことを聞いてくれる、優しい子に育ったようで何よりだ。
「それじゃあ、お休み」
「はい! おやすみなさい!」
アイリスが腕に抱き着いてきたが、エアリスが居なくて寂しいのだろうと思うと、寝づらくても我慢することにした。
「ふふふ!」
「ほら、もう寝なさい」
めちゃくちゃ目を開けてこちらを見ていたので、注意する。
「はーい」
今日のアイリスは、甘々だった。
アシムも、明日に備えて早く寝るようにした。





