第21話 決着
「シャルル様!」
アシムはビックリしたが、シャルル姫を助けた時と同じような、魔法でガゴの攻撃を防いでいた。
「クッ!」
アシムはガゴに追いつき、後ろから首を刎ね正面から心臓の位置を突き刺す。
声を上げることなく、その巨体が地面に沈む。
「念のため燃やすか」
魂を破壊した感覚はあったが、不測の事態が起きても怖いので、黒い炎で燃やす。
「アイリス! シャルル様! 大丈夫ですか?」
二人に近づき、安否を確認する。
「大丈夫ですわ」
「お兄様!」
アイリスが抱き着いてきた。
「アイリスどうして、戻ってきたんだ?」
「怖かったから」
「ここの方が危険で怖いぞ?」
「お兄様の側が一番安心」
抱き着きながら頭をすりすりしてくる。
「アイリス!」
アイリスを探していたであろう、面々が合流する。
「心配したんだぞ!」
父親に怒られている。
「アイツはどうなったんだ?」
リーゼロッテが聞いてきた。
「ああ、倒して燃やした」
「死体は残っていないのか?」
「ああ、必要だったか?」
「必要と言えば必要だな、証拠になるし、なにより禁書を使った身体だ、研究の価値はある」
「あ、すみません」
結構悪いことをしてしまったようだ。
「いや、いいんだそんなことは。まずみんなが助かることが第一だからな」
「ありがとうございます」
「敬語になってるぞ」
半目で睨まれてしまった。
「すみません!」
無言で睨まれる。
「ごめん?」
「まぁいい、話は王都で聞くから、後始末をしよう」
「え! 王都行かないとダメ?」
「当事者だろう、これは国家反逆だぞ? 王自ら裁くことになる」
「わかったよ」
駄々をこねても仕方がない。
「それに、サルバトーレ家は褒賞を貰えるぞ?」
「え?」
「国家反逆を未然に防いだからな」
そういうと、リーゼロッテは街へ衛兵を呼びに行った。
「そういえば、この人たちはどうするんだっけ?」
ダリアと、ゴドーを見る。
「もちろん、裁かれるわ!」
シャルル姫が答えてくれた。
「そっか、じゃあ拘束しとく?」
「いえ、衛兵が来るまで、見ておくだけでいいわ」
逃げる気力もないだろう、ダリアとゴドーは茫然としていた。
「そうだね」
☆
処理も大体終わり、後日王都で証言をすることになった。
デュラム家の屋敷を調べたら、反逆の計画をやり取りしている文書が見つかったようだ。
どこの国ということは分からなかったが、国内で反乱を起こし、敵国を引き込む作戦だったようだ。
ガゴの動機は分からないままだったが、恐らく領地経営が上手くいかず、サルバトーレ家を完全に手中に収め、反乱を成功させて敵国に好待遇を、約束させていたようだ。
余計な欲をかかず、ちゃんと統治していれば、損をするような土地ではないのだが、相当お金の使い方が荒かったようだ。
「姉上、僕も後から向かいます」
「一緒にいけないのが残念だわ」
「準備もありますので」
「そうね」
サルバトーレ家は、これを機に王都へ引っ越す計画をしていた。
父は、騎士団への入団を希望するようで、王都で就職活動だ。
資金はどうするかって? 我が家での一番の稼ぎ頭はアシムだ、1000金貨を一気に返せる人間が、1000金貨ちょうどの稼ぎなはずがない。
「エアリスすぐ会えるが、気を付けるんだぞ!」
アダンは娘が心配なようだ。
「1日の旅なのですが……はい、わかりました」
父親の心配もわからなくはない、8歳の娘が、護衛を雇っているとはいえ旅をするのだ。
「フェルツ! 姉上を頼むぞ」
「任せときな、これでも信頼と実績が売りなものでね!」
護衛は、フェルツが選んだハンターに頼んである、意外と顔が広く、ベテランなようだ。
「アイリスもまたね」
家族の別れが済み、エアリスが出発する。
「よし! 急いで準備するぞ!」
サルバトーレ家は、意外とこの土地でも頼られていた、父親は仕事の引継ぎなどを急いで終わらせるようだ。
「よし! アイリス! 僕たちは家を片付けるぞ!」
4歳になる子供を、6歳になる子供が引き連れて引っ越しの準備に向かう。
「待ってお兄様!」
引っ越しや王都での役割が待っており、忙しくなるが、これでようやくアシムの自由になるという目的を達成できた。
これからは自由に生きられるのと、家族を守れた嬉しさで、笑顔が止まらない6歳児が歩いていた。





