第20話 本物と偽物
「悪魔降ろし?」
「なんだガキしか残っていないのか」
エアリス、アダン、アイリスの素早い行動により、みんなを避難させることに成功した。
「それに、黒い炎が効かない?」
確かに着弾したはずだが、炎に包まれている様子はない。
「貴様の黒い炎、まさか本物だとはな! しかし! 神を殺せる私を倒せんよ」
「負ける気はしないけどな!」
壁に掛けてあった剣が、床に散らばっている。
アシムは、それを拾う。
「なかなか名剣じゃないか」
「ハハハ! いくら名剣で切っても私は無限に回復するぞ?」
「おいおい、さっきのガーゴイル見なかったのか?」
「あれと一緒にするな! 今、私は禁書の全ての力を、注ぎこんでいるんだぞ!」
「所詮偽物だけどな」
「生意気な口を叩くではないか!」
ガゴが飛んで襲ってきた。
「危ないな!」
勢いはあったが、普通に避けられた。
しかし、威力はなかなかのもので壁をぶち抜いていた。
すると、壁の向こうからまた飛び出してきた。
「危ないって、こんな狭い所で暴れ回ったら!」
今度は避けずに、剣の腹で受流すように当てる。
「ガァ!」
ガゴが変な声を出して、窓を突き破っていった。
「逃がさないよ!」
アシムが意図的に、外に出したのだが、そのまま逃げられるかもと、今更ながら思っていた。
「はぁはぁはぁ」
ガゴが苦しそうに、剣を当てられた肩を抑えている。
「やっぱ効いてるじゃん」
「何故だ!」
ガゴの肩は、溶けているように見えた。
「魔力を多く込めただけだよ!」
剣を見てみると、黒い魔力が覆っていた。
「試してみたけど、この魔力炎以外にも使えるみたいだ」
「クソッ! 禁書を使った私の方が劣ると言うのか!」
「そりゃ偽物だし」
アシムは、ガゴの肩が徐々に回復をしているのをみて、斬りかかる。
「へぇ、それでも回復するって相当強いんじゃない?」
「なめるなぁ!」
完全な上から目線の言葉に、ガゴが激怒する。
「魂を焼いているから、回復するなら魂から回復しないといけないんだけど!」
「死ねぇ!」
先程みんなを回復させたので、魂の回復の大変さはよくわかる。
相当魔力を消費しているはずだ。
「クソッ! 何故だ! 何故貴様の方が、強い!」
何度も拳をぶつけてくるが、それをことごとく剣で受流す。
もちろん、黒い魔力を纏った剣にガゴの魂が削られる。
「はぁはぁはぁ」
ガゴが距離を取り、息を整えている。
「そろそろ決着をつけようか!」
アシムは姿勢を低く構える。
ガゴの表情は、暗くてよく見えないが、覚悟を決めたのだろう、あちらも構える。
「ふっ!」
アシムが突っ込む。
ガゴに到達すると思った瞬間、ガゴが全く別の方向に走り出した。
「なっ!」
上手く躱されたが、なんとか腕は斬り裂いた。
「逃がすかよ!」
本当に、逃走を始めたと思ったアシムは、必死に追いかける。
「あれは!」
ガゴが走る先に、1人の影を見つける。
「お兄様!」
向こうもこちらに気づいたのだろう、アシムを呼ぶ声がする。
「アイリス!」
父親達とはぐれたのか、アイリス一人でこちらに向かってきていた。
「お兄様!」
アイリスがこちらを見て、ガゴに気づき、魔法を放つ。
しかし、慌てて撃った魔法は威力が弱く、ガゴは気にせず突っ込んでくる。
「ギリギリか!」
魔法を無詠唱で撃ったとしても、ガゴの再生能力でごり押しされれば止めようがない。
アシムは、物理的に止めようと必死に追いかける。
「アイリス! 身を守れ!」
アイリスは土魔法で、必死に壁を作る。
「無駄無駄!」
ガゴはものともせず、壁を破壊する、しかし。
「クソッ!」
ガゴはアイリスを見失った、そう防御として使ったのではなく、目隠しとして壁を作ったのだ。
「見つけたぞ!」
しかし、数秒稼げただけで隠れるのには限界があった。
「いや!」
ガゴがアイリスに手を伸ばす。
「クソ!」
アシムはギリギリ間に合うかどうかのタイミングだ。
すると、白い光がアイリスを包んだ。
「そうはさせませんわよ!」
暗闇から出てきたのは、シャルル姫だった。





