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第187話 冷緑の森④

「大丈夫か!」


 アダンが倒れている男に駆け寄る。

 様子を見る限り、もう息をしていないようだ。

 この場所にはこの男以外にも何人か存在しており、座り込んでいる者や倒れている者、それを治療する者がいた。


「何があったんだ? お前たちはエルディアの仲間ではないのか? エルディアはどこにいる?」


 あきらかに異常事態だ。

 怪我をしている中でも比較的軽い者を見つけ、事情を聴いてみる。


「グールだ。グールにやられたんだ」

「グール? グールにやられるような人たちには見えないけど……」


 エルディア一行は全員ヴァンパイアのはずだ。

 ヴァンパイアは人間を凌駕する基本スペックを有しているはず。

 それが、それなりの人間ハンターなら苦戦すらしないグールにやられるなんて考えられないのだ。


「狂化グールだ。……人間の血を飲んだグールが現れたんだよ」

「ちょっと! それは言っちゃダメ!」


 狂化グールの話が出たとたん、それを咎める声があがった。


「カ、エルディア様に誰にも話すなと言われていたでしょ! なんで話しちゃうの!」

「お前もこの人間には見覚えがあるだろ? エルディア様がお気に入りの人間だ」

「だからって、教えていいわけないじゃない」

「よくないのは分かっている。だが、エルディア様を助けに行けるのはこいつらぐらいだ」

「この人達に助けを求めるの? 無理よ! いくら人間の中で強いからって、エルディア様より弱かったら助けにならないじゃない」


 なにやら勝手に話が進んでいるが、エルディアことカベイラは助けが必要な状況らしい。

 だが、この女の人が言う通り、カベイラより弱い俺たちが助けに向かったところで何かできるのだろうか。

 むしろ足を引っ張りそうだが。


「我らが不覚を取ったのは血塊石(けっかいせき)のせいであろう? もし奴が血塊石を大量に用意しているなら、エルディア様とて危ない。むしろ、人間の方が都合がいいだろう」

「うっ。それはそうだけど……でも、あいつがいたら確実に死ぬわよ」

「だろうな……お前たち、アシムとか言ったな? 今から教えることは他言無用で頼む。そして、この話を聞いた上で俺の頼みを聞いて欲しい」


 二人の会話を聞いていたので頼みというのは容易に想像できる。

 エルディアの援護、もしくは救助を頼みたいのだろう。

 だが、後半の会話部分がそれを躊躇わせるには十分な内容だ。


「父上、姉上。頼んでも無駄だとは思いますが、この話僕だけで聞いていいですか?」


 カベイラやこの人たちがヴァンパイアであるということはまだ誰も知っていない。

 恐らくこの人たちが今から話すことはヴァンパイア関連のことだろう。

 ヴァンパイアは人間より遥かに身体能力が高い。そんな人たちが苦戦するような戦場へ家族を連れていきたいとは思わない。


「ダメに決まっているだろう……むしろ私だけで聞きたいが、アシム何か知っているのだな?」


 俺はアダンの問いに頷いた。

 ここまできて隠し通すのは無理だろう。


 

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