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第185話 冷緑の森②-2

 木を五つほど挟んだ向こう側からアシムとエアリスが戦う音が聞こえる。

 今回の間引きはただ魔物を倒すだけではなく、森の中での戦闘経験を積むという目的がある。

 しかし、アシムとエアリスならばこの森で苦戦する魔物はまず出ない。


 なので、アシムとエアリスにはある課題を与えておいた。

 戦闘音から察するに、アシムが魔法で足止めを行い、止めをエアリスといった役割で連携しているようだ。


 まあ順当な役割だと思うが、今回の課題としては不合格だ。


 アシムとエアリスが戦闘を終えてこちらに向かってきた。

 それを確認できた俺は、適当にいなし続けていた魔物と一度距離を取り仕切り直しをする。


「アシムとエアリスが来たんでね。そちらさんの本気をそろそろ見せてもらいたいものだ」


 対峙する魔物は二体。

 正直物足りない。

 しかし、ここは親として子供たちに糧としてもらえるような戦い方を見せたいものだ。


「ほら、どうしたかかって来い!」


 先ほどから全ての攻撃をいなし続けたからか、魔物が俺への警戒度を高めているようだ。

 魔物側に最初あった勢いは完全に消え失せていた。


「攻撃を全て躱された程度でもうギブアップか? その自慢の四本脚は飾りってことか!」


 俺は挑発するように魔物へかかってこいとジェスチャーを送る。

 言葉がわかるはずないのだが、魔物は狂ったように怒り出した。


「やっと本気になったか……だがまだ足りんな」


 二匹の魔物は俺を挟み込むような位置から襲ってくる。

 右も左も両方対応しなければならない状況は普通なら厳しいといわれるだろう。

 だが、これは明確な力関係のある戦い。


「とはいえ、力技だけでは味気もない。アシムとエアリスにお手本というやつを見せないとな」


 アシムやエアリスならそのまま受ける形を取るだろう。

 その方がタイミングも取りやすいし、片方を倒した後にもう片方もすぐに倒せるからだ。

 だが、それはこちらが完全に各上の場合のみ有効な手段だ。

 同等かそれ以上の実力を持つ相手に囲まれた場合は、そんなことをしてしまえばこちらが防戦一方になってしまい、じり貧になってしまう。


 なので、この場合とる行動はというと。


「先に片方を潰す!」


 結論。

 二手に分かれたなら仲間の一は必然的に遠くなる。

 こちらが片方へ詰めることが早ければ早いほど孤立させられる時間が長くなるということだ。

 まあ、相手が格上ならそれでも厳しいが、チャンスを掴み取るならこれがいい。

 勿論逃げるという選択肢が一番だが、今回は戦わなければならないという想定である。


「シッ!」


 作戦通り片方へ勝負を仕掛ける。

 相手は素早い魔物なのと、それほど距離を離して戦っているわけではないので、数舜のうちに後ろからもう一体が追い付いてくるだろう。


「時間がないなら、全力だ」


 この戦いを見ているだろうアシムとエアリスに語り掛けるように呟く。

 技術的な側面ではエアリスとアシムに俺が教えて伸びる部分はもう少ない。

 今はそれが実践になったときの立ち回り方を教えることにシフトしている。


 急にターゲットにされた魔物は驚いたのか、一瞬体が強張った。


「よくそれで生きてこられたな!」


 この魔物の名前はブレードパンサー。

 鋭い爪もさることながら、やわらかそうに見えるたてがみが実は刃のような切れ味を持っているのだ。

 なので、この魔物は体を擦り付けるほどの近さで戦うことを好む。


 俺は一瞬体の強張った魔物へ剣を振り下ろす。


剛刃(ごうじん)


 最大の力を剣へ乗せて斬りつける技だ。

 振り抜いた刃は地面スレスレで止まり、一陣の風を巻き起こした。

 そして次は後ろからやってくるであろう二匹目へとシフトする。


一閃(いっせん)


 予想通りすぐ後ろまで迫っていていた二匹目へと技を放つ。

 一閃とは東の国から伝わったとされる奥義だ。

 本来この技は刀を使い行うものなので、俺の直剣では完璧な一閃は放てないそうだ。

 だが、技なんてものは相手を倒せればなんでもいい。


 今回は剣を振りぬいた後に素早やく振り返って二撃目を放つ必要があった。

 なので、手順が一番少なく、そして威力のある一閃を選択したのだ。


「ふう……つまらんものを斬ってしまった、だったかな?」


 かつての友人が口癖のように言っていた言葉がつい出てしまった。

 この一閃という技はその友人に教えてもらったものだ。


 俺の言葉と同時に、後ろと前で魔物の体が地面へ崩れ落ちる音がした。

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