第17話 デュラム決戦
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とうとうこの日がやってきてしまった。
王都に明日、学園入学のため向かう姉とデュラム家の話し合いだ。
「本当いやらしい契約だな」
アシムはデュラム家とサルバトーレ家で交わされた契約書をみていた。
支払いは年に1回200金貨以上で、滞った場合100金貨の上乗せという暴利にも程がある。
サルバトーレ家がもし5年支払いができなかった場合、デュラム家へ代々仕える専属私兵になるという契約も含まれている。
本気でサルバトーレ家を吸収しにかかっていることが分かる。
「姉上準備はできましたか?」
「ええ、大丈夫よ」
色々な意味の大丈夫が混ざっている返事だった。
(もしもの時は、私が婚約してどうにか収めないと……)
デュラム家の狙いがエアリスであるならば、多分借金を盾に交渉してくることが予想できる。
そのことを分かっているエアリスは、自分との婚約であわよくば借金が返せるように交渉できればいいと思っていた。
デュラム家とサルバトーレ家はすぐ近くなので、歩いて向かう。
アシムは姉の覚悟を感じ取っていた。
(姉上、自分を犠牲に収めようとしているんだね)
姉の覚悟を知ったら、失敗は許されないという思いが強まった。
「父上、大丈夫ですか?」
アダンの顔色が悪く、アシムが心配をする。
「すまないな、子供を守ってやれる親じゃなくて」
懺悔なのだろう、このあとに起こることは政治に疎い父親でもわかるようだ。
「父上、家族は支え合うものです。父が立ち上がれない時は、僕がこの家をお支えましょう」
「アシム……」
「だけど! 必ず立ち上がって下さい! 恰好いい父親でいてください」
「ありがとうアシム」
アダンに頭を撫でられる。
父も真面目に働いて、どうにかしようとしていたのは分かる。
だが、それはデュラム家の掌の中でコントロールされている範疇を出なかったのだ。
(まぁ自分がマークされてなかったから自由に動けたのは確かだしな)
デュラム家もまさか5歳児がこの状況をどうにか出来るとは思っていないだろう。
屋敷につき、中へ入る。
「お待ちしておりました。 どうぞこちらへ」
執事が出てきて、案内をしてくれる。
デュラム家が待っている部屋へ到着する。
「中で既にお待ちになっておられます」
待ち遠したかったのか、格下に見ている家よりも早く部屋に入っている。
「おお、待っておりましたよ」
部屋の中に入ると、デュラム家が待っていた。
「ご機嫌いかがかな? 今日はお互いに有意義な話し合いにしよう」
デュラム家当主のガゴがぬけぬけとした言葉をかけてくる。
「おお! こちらこそ、デュラム家にはお世話になりっぱなしで、何か力になれるなら喜ばしいことだ」
ガゴが顔に笑顔を張り付け、アダンと握手をする。
息子のゴドーとダリア夫人も気持ち悪い笑顔をしている。
(下ごころ見えすぎだろ)
サルバトーレ家は完全に舐められていた、まぁそれも父親が交渉事が苦手なせいなのだが。
「それでは早速本題に入ろうか」
交渉事の前のご機嫌取りもないらしい。
やったとしても、アシムはこの交渉をひっくり返す気満々なのだが。
両家が椅子に座り、話し合いを始める。
「まず、明日学園に向かう前にエアリス入学おめでとうと言わせてくれ」
「ありがとうございます」
「本当にめでたいんだが、我がデュラム家は貴族だ息子のゴドーがいまだに婚約者を貰っていないというのは、外聞が悪い」
さらに年上のお姫様も、空いているのだが。
「そこでだ! 以前約束した婚約を待つという話を早めてはくれないか?」
「それは約束が」
「分かっている。しかし我々の立場も考えてくれ。そこを配慮してくれるような支援を君たちにしてきたつもりはあるのだよ」
アダンの言葉を遮り、完全に優位な立場を生かしている。
「借金ですか……」
「我々も領地を治める身なのだよ」
直接的に借金をちらつかせてきた。
「その借金をすぐ返せるなら、流石に私もこんなことは言わないさ。これは両家のためでもある。 身内になれればある程度の酌量もできるというものだ」
「それは…‥」
「返せるのかね?」
ここぞとばかりに畳みかけてくる。
「支払いが今年も無理そうじゃないか」
そう、デュラム家のじわじわとした縛りで父の働きではすでに返せないのだ。
「エアリス」
アダンが娘に申し訳なさそうに、話しかける。
やはり父では交渉は無理だった。
「わかりました」
覚悟を決めたエアリスが頷く。
ここまで、父がもしかしたら何か対策を練っているかもしれないと、様子を見ていたがこれが限界だろう。
「返せますよ」
アシムの言葉にその場が凍る。
「え?」
エアリスが驚いた声を上げる。
「1度は支払いがあったが、2年支払っていないから借金は1000金貨だぞ?」
5歳に払えるわけがない、ただの戯言だと思っているようだ。
「子供の戯言に付き合っている暇はない」
そう言ってさっさと交渉を済ませようとしてくる。
アシムは人を呼ぶためのベルを鳴らす。
「ん? 誰か呼んだのか?」
ガゴが不機嫌な顔をする。
すると、扉が開きフェルツが入ってきた。
「ほら、1000金貨だ」
ドサッと、重たそうな袋を背中からおろした。
「軽量化の魔法かけても、滅茶苦茶重かったぜ!」
「な、なんだと!」
床に散った大量の金貨を目にしてデュラム家の驚愕した顔が拝めた。
「お返ししますよ!」
今度はアシムが笑う番だった。
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