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第160話 神話の始まり(神話時代)

「予知夢で未来は見えても問題があったのじゃ。そもそも世界の滅亡を回避する方法が無いという結果を見ることになってしまってのう」

「そんな……」


世界の終わりを見てメロはその時どう思ったのだろうか。

他に相談しても解決方法がないのだ。行き場のない感情を一人で抱え込んでしまうのは容易に想像できてしまう。


「厳密には世界の滅亡を回避できる”力”を扱う者がいないという話なのじゃがのう」

「”力”? ただ世界が滅ぶのを見たわけじゃないの?」


世界の終わり……。

見た本人にしかその光景はわからないだろうが、自分ならそんなもの起きる未来だとしても見たくはない。


「メロの予知夢は優秀でのう。問題と同時にそれを解決している光景もみれるのじゃ」

「便利……」


つい本音が漏れてしまう。

問題が起きてそれを毎回自分の力で解決しようとするならば相当の負担があるだろう。

しかし、解決の方法が手元にあるなら話は別である。


「予知夢で解決の方法までは分かったのじゃが、肝心の世界を救う魔法の適合者がいなかったのじゃ」

「待って! 世界を救えない状態なのに、その解決方法を見れたの?」


当然の疑問である。

世界を救える状態ではないのに、その方法が見れるなどおかしい話なのだ。


「魔法は存在していたのじゃ。じゃが、それを扱っている者の顔は黒く塗りつぶされており、何者かわからなかったのじゃ」


酷い話である。

世界を救える方法を知っておきながらそれが叶わないとは。


「そしてそれは起こった。神々の戦争じゃ」

「神々の戦争……それって」


その話はあまりにも有名である。

精霊の中でもそれを体験した者はまだ存在し、ジウン様を筆頭に今の精霊界でも一目置かれるような精霊達ばかりだ。


「神界大戦じゃ」


――――――神界大戦


全世界を巻き込んだ超常の存在である神々の戦いである。

神はこことは別の世界に住んでおり、基本的にはこの世界に影響を与えることはないと言われている。

だが神界で神同士の争いが起こると、その余波がこの世界まで押し寄せてきたのだ。


その影響で魔物は凶暴化し、人間や精霊の魔力が弱くなり、大地の揺れや火山の活発化など異常事態に陥ったという。


「じゃあもしかしてその神界対戦を終わらせたのって本当はメロさん?」


神界大戦は邪神と創造神での争いであり、その結果創造神が勝利し幕を閉じたとされている。

その時の余波を食い止めるべくジウン様たちは活躍したと聞いている。


「そうじゃな……”アレ”が何かわからぬが、この世界の滅亡を食い止めたのは間違いなくメロじゃ」

「”アレ”?」

「世界の滅亡とは、光に覆われることだったのじゃ」


光に覆われる。

何が起こったのか分からないが、その光に覆われたら滅ぶほどの何かがあったのだろうか。


「光は何もかもを飲み込み、無に変えていった。もしかしたらあれは神から漏れ出た魔力なのかもしれないが、我々にはどうすることもできない大きな力だった」


神の魔力。

意図的ではないにしろ、創造神が自分の力が原因で世界を滅ぼすなど皮肉にもほどがある。

「そしてメロはそれを食い止めるために自分の属性でない魔力を大量に取り込んだのじゃ」

「え! それって死んじゃうじゃん!」


精霊は人間と違い自分に合った魔力以外を取り込むと体に異常が起きる。

そして取り込み過ぎると死に至るというのは誰もが知っている常識だ。


「そうじゃ。じゃが神の魔力を止めるには”神聖魔法”が必要だったのじゃ。そう、お主の黒い魔力……それがこの世界を救った救世の魔法なのじゃ」

「俺の魔法が世界を救った……」


世界を救った魔法がまさか自分に備わっているとは。

だが納得できない部分もある。


「世界を救うほどの魔法なのに何で他の精霊はこの魔力が嫌いなの? 害を与えるわけでもないのに、この魔力に触れた精霊はみんな嫌な顔をするよ?」


仲のいい友人ですら直接この魔力に触ると顔をしかめてしまう。


「そうじゃな。お主はまだその魔力を上手く扱えておらんから分からないだろうが、神聖魔法というのは、魔法を飲み込む魔法なのじゃ」


魔法を飲み込むなどそんな現象は今まで一度もなかった。

これまでは黒い炎を発現させ、そのものの魂を焼き尽くすということしかできなかったのだ。


「それ故に他の者の魔法も無意識のうちに吸い取ってしまっとるのじゃ」


精霊は魔力が少なくなると弱ってしまう。人間と違い、魔力がゼロになると精霊の存在も消えてしまうのだ。


「だから俺は嫌われているのか。ジウン様は今も俺に魔力を吸い取られているの?」

「いや、お主の魔力は感じ取れるが吸い取られはしない。お主が魔法を使うと吸い取られるがの」


神界大戦があったら役に立つのだろうが、現状この魔法は必要ないようだ。


「そう落ち込むでない。この話にはまだ続きがある」

「続き?」

「そうじゃ。メロは最後に言ったのじゃ。この魔法が再び必要になるとな」


必ず当たる予知夢が神聖魔法が必要になると言っている。

それはつまり。


「そうじゃ。神の戦いはまだ終わってはおらんのじゃ」


世界の滅亡は今からやってくるようだ。



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