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第152話 精霊と人間②

サリア様と精霊王の話は凄まじいものだった。いや、信じられないような話だったのだ。


「え! サリア様精霊王に求婚されたんですか?」

「はい」


精霊の国に入ることを許されたのも精霊王に気に入られたからだとか。


「精霊と人間って結婚できるの?」


エアリスはここまで静かに聞いていたが、流石に気になったらしい。


「できるそうです。その場合精霊が人間になるか、人間が精霊になるかをしないといけないらしいですが」

「ちょっとまって! 人間が精霊になれる!? 精霊が人間になれる!? どういうことなの?」


驚きのあまり声が上擦っている。しかしそれも仕方がないと思う。

普段は傍で何を聞いても関心を示さないユーリですら表情に変化を見せている。


「あ! サリア様それに答えて大丈夫なんですか?」


ここまで聞いてなんだが、精霊に気に入られたわけでもない人間に話していい内容だとは思わない。


「大丈夫です。ですがこれから先を聞く場合は精霊の国に行くことになります」

「それはどういうことですか?」

「私が精霊王に気に入られたときに言われたのですが、秘密を一人で抱え込むのは大変だろうから信頼する人間には話してもいいと。但し、話を聞いた人物を精霊王に謁見させるという条件でです」


精霊の秘密とも言える内容だけに精霊王も確認はしておきたいのだろう。


「サリア様相当気に入られてますね」

「え、えぇ。そうですね」


何かあるのだろうか、目を逸らしている。


「サリア! まだ聞いてないわよ!」

「そうですよね。聞きたいですよね」

「精霊王と結婚したの?」

「え! そっちですか!」


今の流れ的には人間が精霊になれるという部分を聞きたいのだろうと理解していたはずだが、しかしエアリスは精霊王との恋愛事情が気になったらしい。


「誤解しないでくださいよ! ちゃんと断りました!」


サリア様は結婚するにはまだ若い年齢に見えるが、精霊からしたら関係ないかもしれない。


「断ったのね。精霊王ってことは精霊にも性別があるのかしら?」

「いえ、精霊に男女の区別はないそうです。性別や姿形は一緒になるパートナーに合わせるそうです」

「精霊……凄い」


性別や姿を変えられるなら日常の中に潜んでいる可能性もあるかもしれない。


「皆さんいいんですか?」

「何かしら?」


サリア様の問いにエアリスが疑問で返す。


「話を聞いたら精霊王に謁見しなければなりません。悪い王ではありませんが少々気難しいというか……」

「厄介な相手なんですか?」


謁見できるならむしろありがたい相手なのだが、サリア様が何故か渋る様子を見せた。


「理解ある王ではあるんですが諦めが悪いというか何というか」

「もしかしてサリアのこと諦めてないの?」


エアリスがサリア様の目を見て質問をすると、動揺が見え視線を逸らした。


「はぁ。サリアの気持ちはどうなの? 一回断っているということはそういう気持ちはないのでしょう?」

「はい。私に精霊王と結婚する気持ちはございません」


その言葉を発するときには真っすぐな視線でこちらを見ていた。


「まあ、理解のある王なら大丈夫だと思います。謁見しますよ」


その言葉に他のメンバーも頷き全員の総意が示された。


「わかりました。では精霊についてご説明しますね」


こちらを完全に信頼してくれたのだろう。

本来は自分の墓場まで持っていく秘密を話始めてくれた。


◇◆◇◆◇◆


「それじゃあ今日はこんなところかしら?」

「随分話込んじゃったね」


サリア様が精霊のことを話すと意外と時間が経ってしまい、外はもう暗くなっていた。

内容としては精霊の国のことや人間との歴史などであった。

その中でも大昔、それこそ神話と言われる大戦にも精霊が関わっていたことには驚いた。


「まだ信じ難い話だけど、驚くべき内容だったわ」

「精霊に気に入られるのも稀みたいだしね」


精霊王に謁見した人間は結構いるらしいが、全員が精霊に気に入られて契約を結べたわけではないらしい。むしろほとんどの人間が二度と精霊の姿を見ないのが普通だとか。


「光の精霊よ戻って」


サリアは顕現していた光の精霊に姿を消すように命令する。

精霊は本来名前や性別がなく契約をしたあとも火の精霊や光の精霊と呼ぶそうだが、人間と結婚した精霊などは名前を付けて人として暮らしていくのだとか。


その際に精霊としての力はほとんど失われてしまうので、よっぽどのことがない限り精霊は人間に求婚などしないらしい。

サリア様の場合は精霊にならないかとの誘いで逆に人間を辞めるパターンだったのだが、人間から精霊になると二度と人には戻れなくなってしまうそうだ。


こう聞くと結構簡単に精霊になれそうだが、そうではないらしく精霊になれる適性なるものを持ち合わせていないとそもそも無理なのだ。

種族が根本的に変わってしまう大魔法を使うので歴史的にも数える程度しか例がないらしい。


「では精霊王に連絡を取ってみますので返事がきたらお伝えしますね」


精霊と契約したいという話から精霊王との謁見というところまで膨らんでしまったが、これをきっかけに精霊と関係を持てればと思う。


解散して就寝時間になって肝心なことに気付く。


「あっ! どうやって精霊と契約するのか聞いてない!」


精霊と契約するのは難しいということはわかったが、実際に契約に至った話を聞いていなかったのだ。

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