第15話 シャルル姫
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「お! あれ買おう!」
アシムは今王都に来ていた。
アシムの住んでいる街コーデイルから、午前中いっぱい全力疾走で走って辿りついた。
「鍛錬積んでて良かった」
普通王都まで馬車で1日かかるのだが、アシムはすでに英雄の域に足を踏み入れていた。
「会えるか分らんからな、観光よりも用事を先に終わらせるか」
観光という毒牙に掛かっていた自分の心を律した。
アシムは用事を終わらせるために、‘‘王城‘‘へ向かった。
「すみません!」
「なんだ坊主?」
城の門を守っている騎士に話しかける。
「アシムと言います! リーゼロッテ副団長はいらっしゃいますか?」
「おお、礼儀のできるガキだな、生憎だが副団長様はお忙しいので会えないぞ?」
話を通しておくと言っていたのは嘘だったのか、もしくは時間が経ちすぎて忘れられているのか。
アシムはリーゼロッテを呼び出してもらうために演技をすることにした。
「僕、リーゼロッテお姉ちゃんにいつでも来ていいって言われたから来たのに……」
瞳に涙を溜めながら騎士を見つめる。
「お、お姉ちゃん? もしかして親戚か何かか?」
「お姉ちゃんは、従姉って言ってたよ」
「従姉だって?」
「うん」
「ちょっと待ってろ」
「約束してるなら通さないとまずいぞ」
「とにかく確認だ」
一人の騎士が慌てて王城に入っていく。
暫くすると
「アシム!」
王城方からリーゼロッテが見えた。
「マジで従姉かよ」
残っていた騎士が呟く。
「ご苦労さん」
アシムは騎士の腰の部分を叩き、中に入る。
騎士は信じていなかったのか、渋い顔をしていた。
「アシム! 久しぶりだな! 急にどうしたんだ?」
「リーゼロッテ久しぶり。約束を果たしてもらおうと思ってね」
「中で話そうか」
アシムはリーゼロッテに連れられて王城に入った。
☆
「ここは?」
応接室にしては、煌びやかな装飾の施された扉の前に案内された。
「話の前に紹介しておきたい人がいてな」
「紹介したい人?」
「ああ、その人も君の力になりたいと言ってくれているんだ」
「僕の」
「会ってみればわかるさ」
そう言ってリーゼは扉をノックする。
「リーゼです!」
リーゼロッテが名乗ると中から入るよう指示があった。
「失礼します」
恐る恐る中に入ると、中で待っていたのはあの日助けたお姫様だった。
「あなたがアシムなのですね」
パッチリとした目に整った顔、一瞬見惚れてしまったがすぐに王族の御前ということを思い出す。
「はっ! 私はサルバトーレ家嫡男! アシム・サルバトーレと申します」
片膝をつき、臣下の礼をすぐにとる。
シャルル姫はビックリしてポカンとしていた。
「ははは!」
リーゼロッテの笑い声が聞こえる。
「シャル様、こういうことです」
「なるほど、リーゼの言うことは本当だったのですね」
アシムはこの会話が気になるが、許可があるまで喋れない。
「アシム! 面を上げて」
優しく言われ、アシムは言う通りに顔を上げる。
「ここは非公式の場よ、もっというなら私が気楽に皆に接してもらえる唯一の場所なの」
お姫様は外にでると、国民の視線を気にしなければならない。
そういった対応は疲れるのだろう、できるだけ楽に接してもらいたいのだ。
「わかりました」
「いいえ、分かっていないわ! リーゼには敬語を使わないのに、何故私には敬語なの?」
「敬語を外すような関係ではないので」
シャルル姫がまたもやポカンとした。
「アシム、それは流石に傷つくと思うぞ」
リーゼロッテが注意する。
「し、失礼しました!」
アシムの敬語がさらにシャルル姫の心を抉る。
しかし、年下にみっともない姿は見せられない、気丈に振る舞う。
「け、敬語は禁止よ! 少なくともこの部屋では」
片膝を地面について言っているので、気丈に振る舞えていなかった!
アシムとシャルルの眼が合う。
「ぷっ、ははは!」
「あははははは!」
アシムとシャルル姫が同時に笑う。
「わかりま、わかったよ敬語はこの部屋では止める」
「ありがとう、助かるわ」
途中からアシムにからかわれていることに気づき、お互いの距離が近づいた気がした。
「うんうん、仲良くなれたようでよかった」
リーゼロッテが頷く。
「アシム、本当にありがとう! あの日助けられてからお礼を言えずにいて、ずっと心に引っかかっていたの」
「はい、そのお礼は確かに受け取りました」
「ふふ、ありがとう!」
「アシムありがとう」
リーゼロッテにも礼を言われた。
「それでアシム、リーゼと約束したんですって?」
「ええ、僕が困ったときに助けてもらうと」
「それが今日なの?」
「今日というか、いつになるかはわからないけど、近日中に困ったことになりそうで」
「そう、その約束私も手伝うわ」
願ってもない申し出だった。
「内容聞かないで了承して大丈夫?」
「ええ、リーゼからある程度は聞いてるもの」
「わかりました、是非手伝ってもらいたいから今から話すよ」
心強い味方も加わり、アシムは確かな手ごたえを感じていた。





