第134話 使者
純白のベッドに横たわる少女が寝返りをうつ。
教会から治療に来て貰っているシスターが診療の結果を告げる。
「魔力枯渇に、体力低下が原因で熱が出ているようです。外傷はなかったので、栄養をつけて大事にしていれば大丈夫です」
シスターが部屋を出ていくとき何か言いたげだったが、結局何もなく退室していった。
治療の合間に時間があったので、教会との関係を聞いたのだが、私の口からは何も言えませんの一点張りだった。
「それじゃあ、後はお願いね」
「かしこまりました」
メイドに世話をお願いして部屋を出ていく。
桃色の髪をもつ少女の名前はサリアというらしい。もう一方の橙色の女性はヴィーナといって、シスター兼護衛なのだそうだ。
移動中に身の上を少し聞いたのだが、途中から発熱してしまい中途半端なことしか聞けなかった。
話の中で教会の関係者に身柄を渡して欲しくなく、保護をお願いしたいということだったので、教会のシスターが何か言ってくるかと警戒していたが、何もなく少し拍子抜けしている。
(身柄を預かって教会で治療するとか言ってこなかったな)
物思いに更けながら廊下に出ると、執事が正面から歩いてきた。何か用がある様子だった。
「アシム様、王城からの使者です」
「わかった。客間に通して」
「かしこまりました」
ジークフリートが遠征中に教会関係者らしき人物『サリア』と『ヴィーナ』を保護したと報告した結果だろう。
使者よりも先に客間に入り出迎える準備をする。
少しして王城からの使者が入ってきた。
「リーゼロッテ! なぜ副団長が?」
「ははは! 驚かせたかな? 今回の内容は少し厄介でね。報告をたまたま耳にしたから、私が出向くことにしたんだよ」
部屋に入ってきたのは見覚えのある顔、騎士団副団長のリーゼロッテだった。
副団長が使者としてくるということに疑問を感じるが、それだけ大事だということだろう。
「あんまり聞きたくないかも……」
「手遅れだよ」
リーゼロッテは困っている顔を面白がるように笑顔を向けてくる。
「しょうがない。 エリゼ! 紅茶は苦めにして」
「おいおい、早く帰らせようとするなよ」
冗談を交えながら互いが席につく。
指示を受けたエリゼは苦笑しつつ、いつもどおり来客用の紅茶を淹れてくれる。
「では早速だが、アシムには聖女様の保護を頼みたい」
いきなり出た聖女という言葉に驚くが、教会関係者ということは……
「今回保護をした人物が聖女なのかな?」
「ああ、シャルル様に匹敵する”固有魔法”の担い手だ」
”固有魔法”聞きなれない言葉と、シャルル姫もその所有者という重要そうな情報が出てきた。
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