第13話 姫様救出
「この道を逆に?」
「ああ、森の中はオークのテリトリーである可能性があるから、ギリギリまで入らないと思う」
「わかった! 走れるか?」
「ああ、まだまだ大丈夫だ!」
アシムとリーゼロッテは走り出す。
「リーゼロッテ! オークと戦闘になってからどれくらい経つ?」
「一刻も経っていないはずだ」
比較的時間は経っていないようだ。
「でも急がないとヤバいな」
オークは足が遅いので追いつかれにくいが、体力があるので結構しつこく追ってくる。
馬に乗っていれば余裕で逃げ切れるが。
「馬は使ってないよな?」
襲った時に潰したのだろう、馬はやられていた。
「ああ、奴ら奇襲で馬を潰しにきたからな」
知能が高い上に、欲望に忠実なことが厄介だ。
暫く進むと戦闘痕を見つけた。
「これは」
「森の中に入ったな」
少しでも時間を稼ぐために森に入ったのだろう、木々が傷ついていた。
捜索を森へ切り替える、また逃亡に移ったのか戦闘痕の後に人が通ったようなあとを見つける。
「ここだ」
「いった方向がわかるのか?」
「ああ、ここだけ草の倒れてる方向がおかしいだろ?」
「倒れてる? 私には普通に見えるのだが」
無理もないだろう、見た目的にはそんなに変化はないのだから。
「こっちであってるさ」
しかし、アシムにはしっかり見えていた。
そこからさらに進むと。
「あ!」
リーゼロッテが叫んだ。
「ああ、そのまま助けに行くぞ!」
オークが人を襲っているのを見つけた、どうやら何かの魔法で身を守っているらしく、オーク達が取り囲んで魔法の壁らしきものを殴っていた。
オーク一匹一匹の頭を吹き飛ばし、一撃で仕留めていく。
「リーゼロッテ! 無理するなよ!」
リーゼロッテは途中で拾った武器で戦っていたが、一匹倒すのに時間がかかって囲まれそうになっている。
「クソッ!」
一刻も早く襲われている人物であろう姫様を助けたいが、リーゼロッテを見捨てるわけにもいかない。
アシムはリーゼロッテの所まで戻る。
「僕の後ろを頼む」
オークと1対1なら問題ないようなので、相対する数を限定してあげる。
「済まない」
自分が足手まといになっていることが悔しいのか、謝罪をしてきた。
「倒さなくていいからな! 早く姫様と合流するぞ!」
「ああ、頼む」
基本アシムは一撃で倒すため、オーク達が警戒して近寄ってこなくなってきた。
アシムは逃げられる前に、どんどん倒す予定だったがリーゼロッテをフリーにするわけにはいかないので、オークが逃走に走ったら見逃すしかない。
ついに姫様の前に到達する。
「シャルル様!」
「リゼ……」
オークを完全に追い払った。
姫様は限界だったのか、魔法が解け倒れこむ。
「シャルル様」
リーゼロッテが駆け寄り抱きとめる。
シャルル姫は若いが、十代といった感じでアシムより年上だった。
リーゼロッテは姫様に夢中だったので、アシムは後ろで倒れている男を調べた。
「死んでる……」
姫様の護衛として戦ったのだろう、既に息をしていなかった。
リーゼロッテがこちらに気づき、姫様を抱きかかえながら近づいてきた。
「そいつは、最近姫様の近衛に抜擢された有望株の若者で、名をアドイと言います」
「そうか」
姫様を守るために使った命に手を合わせる。
「ここを離れるぞ」
「ああ」
若い近衛も連れていきたかったが、守るものがある今リスクは取れなかった。
リーゼロッテも分かっているようで、何も言わなかった。
町へ戻る道中は必要最低限以外の会話はなかった。
途中でリーゼロッテが疲れているようだったので、シャルル姫を代わりにもとうとしたが、アシムの身長では引きずってしまうため、休みを多く入れて進むことになった。
「とりあえず役場に行こう」
「そうだな」
王都に連絡と、保護を求めるために役場に向かった。
「僕はここまでになるから」
リーゼロッテに別れを告げる。
「そうか、せめて家を教えてくれないか?」
ついてこない理由を深くは聞いてこず、お礼のために家を聞いているのだろう。
「それは秘密だ」
「それでは、約束の礼をするのが難しいのではないか?」
「必要な時は僕から行くよ」
「わかった、しかし王城に私はいるぞ?」
「大丈夫」
アシムの笑顔を見て、これ以上言っても駄目だとリーゼロッテは理解した。
「そうか、アシムという子供が訪ねてきたら話を通すように言っておく」
「助かるよ」
デュラム家に怪しまれてはいけないので、今は目立つわけにはいかなかった。





