第122話 授業
現在、魔法の授業にて歴史的な部分の解説が行われている。
歴代の凄い魔法使いや、今の魔法の基礎を作ったとされる人物やその魔法について先生が話をしている。
だが、先ほどの空き教室での話が衝撃的すぎて授業の内容が頭に入ってこない。戦争になるなどど言われればそれは気になるというものだ。
先生は気を使っているのか先ほどからわざと質問の対象を他の生徒にしているようだ。空き教室での話としては、精霊とは未だ研究の進んでいない戦争兵器のようなものだとか。
これは先生の予想になってしまうが精霊を扱える国は軍事力で1つ抜きんでるため、武力的な優位が働き貿易などで強く出れるようになるだろうと。
なので精霊の存在が明るみに出れば各国争うように研究を始め、下手をしたら敵国が力を手に入れる前に戦争を吹っ掛ける可能性も考えられるとか。むしろ軍事力の高い国ほど先に戦争に積極的になるため周辺国と比べて軍の大きいバスタル王国が小国潰しを始めるかも知れないのだ。
(自分の国が侵略戦争はやだなぁ)
侵略をする国は勿論嫌われる。下手をしたら連合軍などを組まれて潰されるかもしれないので大義なき戦争はするべきではない。
しかし、それを引き起こしてしまう可能性が精霊にはあった。あくまでも可能性だが。
このような予測が立てられるということは前々から精霊の噂があり、今回の件で国ならば確実に情報を掴んでいると確信したようだ。
今は秘密裏に研究が進められている状態かもしれないということだ。となると心配なのは精霊の契約者であるモリトンの兄アイデン・ヴァルデックである。
しかし精霊を自由に動かしていることや、学園には通常通り通っていることから今のところ無茶な研究は行われていないはず……
本当に心配なのは行方をくらませた将軍様だろうということだった。存在がわからない将軍が人体実験などを行われていたらアイデンも将来が危ぶまれる。
「今のところは何もできないから心配しか出来ないんだけど……」
今裏で非人道的な行為が行われていたとしても自分にはどうしようもない。
街道や森で人が魔物に襲われるとわかっていても、それを毎回のように助けには行けない。殺人事件が起こることがあるとわかっていてもそれを事前に止めるための行動ができないのと一緒だ。
何も情報がない状態では動きようがないのだ。
その『もしかして』に動くとすれば、身内や自分にとって大切なものが危険になるかもしれないというときだけだろう。
授業が終了し、今日1日の学園生活の終わりを告げる鐘が鳴る。
「では、今の授業内容はテストに出るのでよく覚えておくように!」
もしかしなくても自習が必要なようだ。





