第117話 爆発
目の前には妖精さんがいるなんともメルヘンチックな光景なのだが、その小さな身体から発しているプレッシャーとのギャップが余計に効果を増幅させていた。
「さあ、これで邪魔者はいなくなったよ! 思う存分……といってもここを壊すわけにはいかないよね。力加減はしても、手抜きはしないでよね?」
期待に満ちた目で見られているが、先ほどの攻撃をあっさり退ける相手が満足してくれるか甚だ疑問ではあるが、闘技場を壊すわけにもいかないという人間側の事情も分かっているあたり、ある程度の常識は通じる可能性があると思っている。
「僕の今出せる全力を見せるよ」
手抜きをすると満足してくれなさそうなので、被害がでない程度に本気を出すことにする。
精霊は魔法の制御に関して驚いていたので、そこの部分を重点的に攻めてみる。
「風と水魔法を合わせた複合魔法だね?」
水魔法と風魔法を合わせて温度を下げていることに気付いたようだ。
しかし、複合魔法という単語は初めて聞いた。魔法の知識に関して精霊は相当優秀なようだ。
水の玉を作り、その周りを風魔法が包み込んでいる。水の温度は下がっているが、凍るまでには至らない。
「3つめの魔法は火魔法かい?」
火魔法を発生させために魔力を練っていると、その魔力の性質を捉えたのか精霊が機先を制してくる。
「先に言うなよ! やり辛いだろ!」
「あはは! ごめんごめん」
舌をペロっと出しておどけて見せる精霊にイラッとする。
「3つの魔法を同時に魔力密度を均一に操るなんて……ん? 火魔法だけ強くした?」
非常にやり辛い、自分の魔法を解説されると全部バレているんじゃないかと思ってしまう。
隠すことではないのだが、秘密を暴かれている気分になるのであまりいい精神状態ではない。
「規模小さくしてるけど、結構威力あるから気をつけろよ!」
準備が整ったので忠告を入れる。
「あれ? これに神聖魔法を組み合わせないの?」
どうやら精霊は神聖魔法を期待していたようだが、今から放つ魔法は自分の自信作なので、こちらの方を見せたくなったのだ。
それに、魔法の制御という意味ではこちらの方が繊細なので、魔法好きの精霊は気に入るだろうと踏んでいる。
「まあ見ててよ……」
準備と忠告が終わったので、早速用意した魔法を互いにぶつけ合う。
低温の水と、魔力で高温にした炎が互いに合わさるとどうなるか。
「お、おおおおおお!」
まるで、初めて手品を見た赤ん坊のように目を広げ驚いている。
「水蒸気爆破は気に入ったかな?」
魔法を使った化学で精霊の度肝を抜けたようだ。





