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第109話 他

「頑張ってユーリ君!」


マイアがユーリに熱い声援を送る。

 応援する必要がないぐらいにユーリは強いのだが、一緒に練習してきた仲間ということなのだろう。

 ちなみにマイアとライアは運よくお互いが対戦相手に選ばれ、事前の計画通りに手を抜いて休んでいた。

 現在は何組目かの対戦で、同時に5組が戦っていた。


「アシム君これが終わったらだよね?」


「うんそうだね」


ライアがアシムに声をかけるが、何かモジモジしている。


「どうしたの?」


「あの、ね……」


ライアの様子が変なのに対してアシムが気を遣う。


「お手洗いかな? それだったらあそこの方にあるよ。僕の戦いが見たいなら少し引き延ばしておくから」


「え!?」


アシムは、ライアが尿意を我慢して自分の試合を見ようとしているのかと思った。


「大丈夫?」


アシムの言葉に顔を赤くして固まってしまったライアは口をパクパクさせる。


「ち、違うよ! 次頑張ってね!」


顔を赤くしたまま戦い終わったクラスメイトの中に入っていった。


「失礼なこと聞いちゃったかな? いやでも、それが原因で体調崩されても困るし」


アシムは女の子にトイレを聞くのがいけなかったのかと悩むが、この年齢で気にすることほどのことでもないだろうと割り切る。


「お! ユーリ試してるな」


アシムはユーリの試合が意外と長引いていることに気づき、何をしているのかを見てみる。


「なるほど、片手で戦うのと、相手をコントロールしているな」


一見してみると防戦一方のように見えるが、余裕で捌いており、短剣を一振りしか使っていなかった。

 相手は片手剣なので、短剣では受けないで避けるのが基本になるのだが、ユーリは全ての攻撃を短剣で受け止めていた。


「打ち込みもキッチリ誘えてる」


ユーリが後退しているように見えるが、実のところ相手はついていかなければやられてしまうのだ。

 時々繰り出される深い踏み込みに、素早い攻撃を要所で挟むことにより、相手のやりたいことを潰し、自分の間合いを常に保っている。


「あ!」


ついにユーリが勝負を決めにいった。

 相手の攻撃を紙一重で躱しながら、懐に入り込む。

 短剣で攻撃するのではなく、今まで使っていなかった逆の手で相手の腕をひねり上げる。


「ぐあぁ!」


そのまま短剣を首筋に当てて勝利する。


「ユーリ、ゲドル、ペアそこまで!」


全体を見ているドウグラス先生の声が響く。


「よし! これで全員終わったな」


どうやら他も終わっていたようで、クラスメイトはみんな休んでいた。


「では、アシム・サルバトーレ! モリトン・ヴァルデック! 前へ!」


ついにアシムの出番が来た。

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