第107話 想い
「2人とも大丈夫?」
「うぅ……なんと、か」
実践練習を行っていないにも関わらず、ライアとマイアは疲れ切っている様子だった。
今日は初の実践のということもあり、前日の練習に気合が入ってしまったのだ。
アシムは軽くやって翌日に備える予定だったが、ライアとマイアが最後の日ということもあり、徹底的に教えてほしいと頼まれたのだ。
体力面ではなく、技術面を主に教えたのだが、その技術を落とし込むための練習で大分体にきてしまったようだ。
「アシム君とユーリ君は平気そうだね」
「毎日やってるからね」
「慣れた」
「慣れるんだ……」
マイアはサルバトーレ家でやっているといわれる鍛錬を体験してみてわかったのは、無茶な内容であるということである。
初日は半分もメニューをこなせなかったので、次の日から緩めてライアとマイアでもできる内容にしてもらったのだ。
しかし、サルバトーレ家の鍛錬は、基礎メニューから、実践メニューまで内容が濃く、とても有意義な一週間を過ごしたのは間違いない。
「マイア、今日は上手くサボろう!」
「え! 今日のために頑張ったんじゃないの?」
「クラスメイトと戦う意義はすでに薄いわ!」
マイアとライアは平民なので、実力をアピールできれば貴族に雇われるということもあるが、この一戦を重要視しないほどには強くなったと実感している。
「まあ、今の2人なら欲しがる貴族も結構いるよ」
「そうかな?」
「そうだよ! ほら先生待ってるから行こう」
授業の場所となる闘技場へ向かう。
「わ、私はアシム君に雇って欲しいな~……なんて」
「もうライア! アシム君先に行ってるから聞こえてないよ!」
「聞かれてたら恥ずかしくて明日から顔を合わせれられないよ!」
ライアは頬を赤く染めて恥ずかしがる。
「はぁ、それじゃあいつまでたっても想いを伝えられないよ?」
「す、好きとかじゃないから!」
ライアが動揺する。
「私好きとか一言も言ってないよ?」
「え、あ、うぅ……」
「はあ、もう行くよ!」
マイアはライアの背中を押して先に歩かせる。
「この一週間で態度変わりすぎだっての」
ライアに聞こえない音量で、ここ一週間のライアの変化を思い出す。
教えてもらう中で、ライアのアシムに対する態度がみるみる変わっていったのだ。
最初は憧れの人という感じだったが、今はもう恋する乙女といった感じだ。
「それも仕方ないか」
マイアもアシムをカッコいいと思っていた。
同じ歳とは思えない落ち着きぶりに、実力に見合った余裕。
ただ、ライアがお熱な所を見てしまってからは、アシムを恋愛対象として見れなくなってしまった。
「でも私はユーリ君派だから!」
マイアは先に歩かせたライアに追いつくように、小走りで闘技場へ足を踏み出した。
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