第104話 後ろの貴族
登校初日……
ではないが、本格的に学園の始まる日だ。
「今日は余裕だったな」
「朝寝坊するほうが珍しいけどな」
入学式の時とは違って、朝の鍛錬もこなすぐらい余裕をもっての起床だった。
「あ、テラ! マーシャ! おはよう!」
クラスメイトの顔を見つけ挨拶をする。
「あ、おはようございます!」
マーシャのすっきりとした声と、テラの丁寧なお辞儀が返ってくる。
2人と合流して教室に入る。
「あ! アシム君! おはよう!」
「おはよう!」
ライアとマイアは先に来ていたようだ、2人とも席についておしゃべりをしていた。
「席近かったんだね」
昨日は、教室を出る直前に声をかけられたので、双子の席を意識していなかったのだ。
「ふふふ! そうなんだよ~!」
マイアがユーリの方を見ながら笑いかける。
「マイアはファンを超えてないか?」
「大丈夫、好きな人には容赦ないから」
ライアが保証してくれるようだ。
「そういえば、ライアとマイアはどっちがお姉ちゃんなの?」
「マイアがお姉ちゃんだよ」
「そ、そうなのか」
アシムの予想外といったような反応にマイアが噛みつく。
「何! その意外そうな反応は! 私はしっかりとした姉です!」
アシムが困ったようにライアを見る。
「ははは! そうだね」
「ほら見なさい! 妹も認めてるわ!」
ライアに軽くあしらわれているようにしか見えないが、マイア的に満足そうなので肯定しておく。
「一番近くで見てきてる人が言うならそうなんだろうね」
マイアの機嫌がよくなって来たところで、後ろの席から人が立ちあがってこちらに歩いてきた。
「おいおい、まぐれ貴族様は早速平民と仲良くしてるのか? まあ仲良くしてくれる貴族なんていないだろうから当たり前か! ハハハハハ!」
いきなりけんか腰に話しかけてきた人物は、少し制服を崩して着ていて、身長がかなり小さかった。
「えっと……誰?」
「はあ、これだからまぐれ貴族はダメなんだよ!」
さっきから散々な言われようだが、アシムはこの人物を全く知らなかった。
「子爵家のモリトン・ヴァルデック様よ」
マイアが耳打ちで教えてくれる。
「ハッ! 平民の方が、いくらか頭はマシらしい」
モリトン・ヴァルデックという人物はアシムが気に入らないらしい。今のところ、見下したような言葉しか聞いていない。
「それで、その子爵家様のモリトン様はどのような用がおありで?」
「ハッ! 平民友達しか作れないお前を笑いに来てやったのさ!」
「それは、わざわざご苦労様です」
アシムは特に気にする素振りも見せず、本当にご苦労様ですと労っているようだった。
「貴様!」
「はい! 皆さん! 席に着くように!」
「チッ!」
丁度いいタイミングで担任が入ってきたので、アシムにとって不快な会話はそこで終わった。
しかし、ホームルームの間、後ろの方からずっと視線を感じるのだった。
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