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第103話 ファン

「ユーリのファン?」


「そう! 一目ぼれみたい」


「一目ぼれ!?」


ライアは頬に手を当てイヤイヤしている。

 まだ入学したばかりで、ユーリが有名人ということはないはずなので、本当に一目ぼれなのだろう。


「モテモテだな!」


ユーリをからかうついでに、肘でつつこうとするが避けられてしまった。


「それで、そのグレンというやつはどんな人物なんだ?」


照れ隠しなのか、ユーリがグレンの人物像について聞いてきた。


「その反応は……知らないの?」


「ああ、すまないが知らなくてな」


「そうなんだ。グレン様はね、公爵様の長男なの」


マイアが本当に知らないのかと、不思議そうな表情を浮かべながら説明してくれる。


「公爵家の跡取りなのか!」


アシムの驚きの声にライアがビクリと反応する。


「あ、ごめんごめん。公爵家の息子は悪い性格をしてると思ってた」


「ぷっ、何それ。失礼でしょ」


「すごい偏見」


アシムの”感覚”の中では、偉い貴族ほど性格が歪んでいると思っていた。


「グレン様含め、公爵様達はみんな聡明で有名じゃない?」


「そ、そうなのか」


世の事情に疎いアシムは公爵の評判が良いことに驚いた。

 ユーリが隣で頷いていたので、少しイラッとした。


「お前も知らなかっただろ!」


アシムの突っ込みを華麗に避け、ユーリは遺憾の気持ちを表明した。


「知ってるわ! 噂ぐらい流れてるだろ!」


「なに! ほ、本当なのか!」


「お前が聞いてないだけだろ!」


「そんな!」


「あはははは!」


ユーリとアシムのやり取りを見て、ライアとマイアが笑った。


「みんな学園に入る前なのに、貴族事情とかなんで知ってるのさ?」


貴族の家なら親から話されているだろうが、ライアとマイアは平民である。


「平民は貴族様の顔色を窺わないといけないからね。先に学園に通っている先輩達に聞いてるんだよ」


「そんなに詳しく?」


「うん。といっても貴族様の機嫌を悪くしないことばっかりだけどね」


「貴族の機嫌を悪くしたらどうなるの?」


「単純だよ、いじめられて友達がいなくなる」


「酷でぇ」


「貴族は将来有望だから、自然と人が集まってグループになるからね。貴族にいじめられるイコール集団を敵に回すってこと」


「気を付けないとな」


「お前がその貴族だよ!」


「あはは!」


ユーリの突っ込みにその場の全員が笑った。

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