『氾濫する粗製乱造と確定思想』
『氾濫する粗製乱造と確定思想』
㈠
昔あった作品を踏襲することもなく、不協和音で、ただインパクトを与えるだけの小説芸術。
それは結局、一時代を翻弄するが、何れ歴史に名を刻むことなく消失していく。
㈡
氾濫しているのは、作品だけではなく、執筆者の頭の中が、普遍性を失っているのだ。
ただ、繰り返す波の様に、物事は隆盛を極めても、普遍性がなければ、虚しいだけだろう。
㈢
独創とは、新しくできるものではなく、過去の作品を踏襲し、更にそれを乗り越えた時に現れるものだ。
過去がわからなければ、未来がわからないのと同じで、氾濫する作品群は勢いを止めない。
㈣
それでは、どうやって氾濫する粗製乱造を停止させるか、だが、それは或る一人の先駆者が全てを塗り替えるのである。
粗製乱造を取り払った、まったく新しいフォーム、それは、精神から解き放たれた矢のように、最新を射抜く。
㈤
此処で、一つの確定思想が出来上がる。最新のものとは、過去を踏襲しているとはいえ、まったく新しいので、読者はそれが最新かどうかわからない。
しかし、瞬く間に世界に広がるので、確かに確定された現象なのである。
㈥
人々はその新しさを笑うと同時に、先駆者の作品に、逆に笑われることになる。
いつの時代も、上記した、笑われるという現象停止で、読者はひれ伏し、確定思想は、確定するのである。