表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラフィーの黙示録〜起きたら滅ぼされた世界で女の子になってしまった〜  作者: 瑠奈る
1章 [脱出!地下研究所]~その光景は夢のように~
8/15

07 [人ならざるモノ]

 うるさいくらい蝉のような鳴き声が幾つも重なる。

 冷たい風に吹かれて、ちょっと気持ちいい。

 物陰に隠しながら、怪我を確認するため、体のチェックを始めた。

 結論から言うと、思ったよりも軽く済んだ。服は幾つ破ったところあるが、どれも擦れ傷の程度に止まった。つくづく人間離れた体だと実感した。


「血は赤色なんだ」


 そこは感動すべきことなのかな?青色だったら泣ける自信あるぞ。


「夜の森はなんか危なさそう、このまま朝まで休むのもありか。でも、いまさら野獣くらいならすぐ追い払えると思う。それにこの体、夜目も利きそうだし」


 ーーーーーーーーー

 エネルギー残量 63%

 ーーーーーーーーー


「とにかくなんか食べられそうな物探してみよう。森だし果物くらいある......と信じたい」


「逃げてきた方向と逆に進めよう、またドローンに見つけられたら面倒だ」


 にしても、周りの植物は見たことないものばっかり。地下施設にいた時から既に未来に飛ばされたとか、そういう予感はなんとなくあったけど、これは予想以上な状況かもしれない。

 ほら、これはあれだ、アニメとか漫画とかそういうことによる経験。

 サバイバルに関する知識は......うん、さっぱりだ。

「過去の僕よ、こんな状況もあるからそういう知識もちゃんと勉強しておけ!」

 過去の自分に八つ当たりしながら、森の中で歩き続く。

 やがて夜の帳が降りて、周りが暗くなった頃。僕は名状しがたい違和感に襲われた。







 静かすぎる。

 先まで周り虫やら散々鳴きまくったと言うのに、もう全然聞こえない。心得違いか風も静まったように。

 全身の肌がヒリヒリして、体の本能が警鐘を最大限に鳴らす。これはやばいと。

 すぐ腕輪を武器化し、周りに警戒を怠らないように気を引き締める。

 勘違いにあって欲しい。

 そんな僅かな希望もすぐに掻き消された。

 奴は物陰の中で、こっちに向いて佇んでいる。夜色に溶けた真っ黒な体はまるで保護色のように、それでも僕は強化された視力ではっきりその姿を捉えた。


「悪魔...」


 感想はそれだけだ、あれは僕にとって、想像の域を超える存在だった。


 ドクロみたいな頭に、異形のような体。虚しい目に感情の欠片も見えない。物語のアンデッドのように、しかし生の気配も感じられそれ以上な不気味さがある。


「ガァァァァ!!!!」


 異形は叫びながら、僕に向いて腕を上げた。


「はやい!?」


 すぐ後ろへ退き、回避行動をとる。次の瞬間、異形の手が顔の前に擦れ違った。それだけで髪の先端が削られ、凄まじい風圧に襲われる。


「これでもくらえ!」


 反撃すべく銃口を異形の体に向けて、プラズマの弾丸をぶち込んだ。


「ガアアアア%#*@&ーー!!!」


「嘘......だろう」


 鋼鉄でも溶かせるプラズマの弾丸が異形の体にぶつかり、そのまま霧散した。着弾された部位は高温になり、ほのかに光っているが、それだけだ。


 意味不明な叫びと共に、異形はまるで狂人のように両手を振り続ける。


「怒って...る?」


 突然、異形は暴れることをやめ、両手を地面に置いて野獣のような姿をとる。そして砲弾のように、僕に向けて突進した。

 避けられない!そう悟った瞬間無意識に手で身体を庇うが、異形の頭が僕の腹にぶつかった。

 僕は飛ばされて後ろの木にぶつかる。衝撃で木が折れ、勢い衰えることなく飛べ続けてさらに後ろの木にもぶつかる。


「っ!!」


 口の中に形容しがたい匂いが広がる。全身が痛すぎで悲鳴あげようにもあげれない。視線の隅で異形の姿を捉えた。僕はもう起きられないと判断したのか。止めを刺すためゆっくり近付いてきた。


(全力で戦わないと勝てない相手)


 僕は自分のことを人間だと思っている。こんな体でも、僕の心はきっと人間なのだ。しかし、それは無意識にこの体を制限掛けていることでもある。


 この体は [人間] では無い。


 その一線を超えた時、果たして僕はまた自分のことを [人間] だと認識できるのか。

 わからない、わからないけど残酷な事実そのことに僕は選択権がない。

 そこ代わりに

 死なのか 生なのか

 僕はどっちを選ぶ?

 ()を選んだのは......




















 ーーーーーーーーー

 夜の森に2つの影がいた。

 片方は人ならざる異形。

 もう一方は絶世の美少女 その姿は幼女でも言えなくはないが。

 白いエプロンに水色のドレス。

 黄金色に輝くストレートロングの髪を、風に靡かせて周りを照らしだ。

 少女から得体しれないものでも感じ取ったのか、異形が畏れるように一歩後ずさった。


『そう畏れないでください。その人のことを化け物に見るような目、さすがに傷付きますよ』


『ようこそ 私のお茶会へ』


『私はアリス』


『貴方は一番目のお客様ですよ』


『え??言葉が理解できないって?あら大変!』


『でも大丈夫です!』


『私のお茶会は人に限らず、みんな参加できます!』


『かわいいうさぎちゃんとか来てくれるといいな』


『あ、こっちの話ですから、気にしないでください』


『さぁ、そんなことよりお茶会です!お茶会!』


『特別なお客様には取っておきのデザートがあります』


 少女の茶番に付き合うつもりはないか。異形は少女に向かって


『プラズマブレイド』


 次の瞬間はもう下半身と別れて地面に倒れた。

 少女の右手に一本の剣を握っていた。


『あら、せっかちなお客様ですね そう急がなくてもいいのに、デザートが逃げたりはしませんよ』


『ふふふふふ...』


 少女は異形の上半身へ向けて手をかざした。


『じっくり味わうといい、特別なデザートですよ』











 夜の森に一筋の光が照らした。

 光は徐々に消え、一人の少女が佇んでいる

 満月の下で蛍のような青い光が、周りに飛び回って、とても幻想的な光景がそこに広がった。



あと幕間1話で一章の終わりになります。二章からは物語が大きく動き出します。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ