03 [生きていたい]
「あれ? 僕って誰だっけ?」
思い出そうと頑張ってみたが、記憶にモヤがかかったような感じで上手く思い出せない。
それだけでは無い、今までどんな生活を送ってきたか。日常生活に関する記憶もはっきりしない。
わかったのは僕多分男の子で高校生だったくらいのこと。
あと昔みた映画とアニメ、読んだ本とか、こういった記憶もはっきり覚えている。
「経歴は忘れたけど、知識と技術の類は大丈夫みたいね」
全部忘れるより...ましかな?
知識あるだけでもだいぶ変わると思うけど、参考になれるのはゲームと映画の記憶くらい?うーん、なんかこの先のことが不安になってきた。
とにかくできれば、このホラー気味の部屋から出たい。監禁されていなければの話ですが
床から立ち上がって、部屋のドアだと思われるところまで歩いてみた。
下のところがスースーする...そういえば僕、ドレス着ているな。
「え、それってつまり!?」
今更だけど、そこに手を伸ばして確認して見る。薄々わかってるけど
うん まっ平ら
嗚呼、さらばだ僕の息子よ!今までありがとう!
恐々と胸のところにも手をやる。
心臓の鼓動が聞こえてくる。
ゴクリ
軽く揉んでみた。
うん、ちゃんと膨らんでるけど控えめってところかな。
柔らかくていいちっぱいだ!
なんか気分がおかしくなってきた。
「はっ!何にやっているんですが僕は!」
恥ずかしくて顔から火が出そうになるけど、この状況だからそんなことよりもまず身の安全を確保しければならない!
そもそもこれ僕の体じゃなさそうだし、そう思うとなんかすごく罪悪感が湧き上がってきた。
頭を左右に振って邪な思考を払う
「今はドアの確認だ!ドア!」
ドアまで来て観察してみたが、ノブとレバーの類はついていない。代わりに隣の壁にパネルが付いていて、薄く光っている。
「これを操作して、ドアを開けるかな。さってどんな仕様なのだろう」
パネルに手をやってみて
『ウィィィィ』
あっさりと開けたのだ
えっ?つまり監禁されていないってこと?にしても無骨なデザインなのにずいぶんとSFチックなドアだね。
この流れは、なんか嫌な予感がしてきたぞ。
パネル触った時少し違和感があったけど、大したことでもなさそうから無視することにした。
それよりも
体を隠しながらドアの向こうを覗いて見た。
なにかの薬品の匂いがしたーーー
椅子と机が散らばって、金属の棚が倒れてその上にかけている。試験管やガラスの瓶が地面に落ちて、砕けたものから地面に薬品のシミが残されている。
どう見てもザ・実験室だけど、随分と酷い有様になっているね
まるでなにかの災害でもあったような...
「誰かいませんか」
ーーーーーーーーーーーーー
返事はなかった。人いないことにちょっと落ち込んだけど、それもある意味ほっとした。今の状況ならどう考えても、人いた方が碌でもないことになりそう。
そして、照明は相変わらず薄暗い。
「はぁー、不気味だ」
部屋に入って、最初の部屋より随分と広い空間が広がった。普通な教室の4、5つくらいの広さはあるかもしれない。
そして少し歩いてみたら、あれが唐突に視界に映ってしまった。
心臓が止まりそうと思った。しかし事実はその逆だ。
ドクンドクン
鼓動が早まる
「あ...あ..」
足に力が入らなくて、床に座り込んでしまう。
「ひぃっ]
ヤダヤダヤダ、なんなのあれは、なんでここに死体あるの。
一目ですぐに分かった、あれは死んでやがる。なぜならもうミイラになっている。死んでからそれなり時間を経っただろう。
気持ち悪くて吐きたい。でも何故か吐きそうにも吐けない。
いっそゲロってしまった方が楽になりそうのに
「私もいつかあのようになるの?」
「嫌だ!せっかく夢から目覚めたのに」
「は...はぁ...」
息苦しくて上手く呼吸できない。
右腕の腕輪がやけに冷たく感じる。思わず左手で腕輪を握ってしまう。
「ふふ...」
こんなところで死んでたまるか!体が変わっても、僕は!僕は絶対生きてみせる!
あの時の過ちを繰り返さないように、今回こそ自分の意志で、ちゃんと生きてみせる!