02 [失われたもの]
目に映ったのは金属で出来た黒い天井。そして今、僕は床に寝ているだろう。その床も冷たく、薄暗い照明のせいでとても不気味なのだ。
「頑丈そうな照明器具ね」
ここは僕の部屋じゃない、雰囲気的に倉庫かどこかの施設のような感じ。
まさか寝ているまに誘拐されてここまで!?
いや、僕を誘拐するなんでそもそもメリットあるかな...そういえば先からどこか引っかかってるような。
「んんーんー」
具体的に言えば、自分の声がおかしい。
体もすごく違和感がある。
「まさかね」
嫌な予感がする。
半身を起こして自分の体を確認してみる。
まず目に映ったのは白いエプロンと水色のドレス。
腰まで伸ばしている金色の髪。
白くて力を少しても込めれば折れそうな繊細な腕ってええええ?!
思わず叫びそうになってしまう。
でも怖くて叫べなかった。半身を起こしたからこの部屋の様子も確認できたから。
「ひぃぃぃ!」
代わりに情けない悲鳴を漏らしてしまったが......
メス、ハンマー、鉗子からこぎりとドリルまで。あとよくわからない道具も、それらは床のあちこちに散らされている。
少し遠いところに手術台だと思われるそれも、何かの衝撃でも受けていたように倒れている。自分はその上に寝かされていたかもしれない。改めて観察してみれば手術室みたいな部屋だが、用途不明な道具のせいで不気味ところが、まるでホラー映画の中に入り込んでしまうような錯覚すらある。
カタカタカタ
起きたら自分じゃなくなって知らないところにいる。
怖くて震えが止まらない。
頭も上手く回らない。
カタカタカタカタカタカタ
カタカタカタ
カタカタ
......
...
あれから何時間くらい過ぎただろう。僕はそのまま膝を抱えて寝てしまったみたい。そのおかげでもあるが、今は幾分落ち着くことができた。
「とにかく現状確認しないと」
先まで混乱し過ぎで確認できなかったけど、僕の右腕に金属の腕輪が付けられている。
真っ黒な腕輪だった。サイズもそこそこ大きくて、できれば取れるといいけど...
結局、どれだけ頑張っても取れなかったでので、これに関してはあっさり諦めるしかない。この際にしてまた不安な材料が増えてしまった。
ああもう!これは定番のあれをやるしかない!
やけくそになって頬をつねってみた
「うん...痛みはちゃんと感じるから、夢じゃなさそうよね。だとしたらここはどこだろう。なんで僕は女の子になっている。えっと、僕は普通の男子高校生で......あれ?僕は誰だっけ?」