表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
干物とビールを飲もう  作者: tpfi
1/1

干物の日常

--2024年 12月31日 大晦日


今日は大晦日。世の人々は年末テレビを見たり、家族で年越しそばを食べたりしているだろう。しかし、私にそんな暇はない。

私に年末年始を楽しむことは許されてない。


そう、納期が迫っている。

机にちらばっている書類の中に、1月2日納期と書かれている封筒が目に入る。


幸い、今日で終わりそうだが、もう二徹目だ。眠くてたまらない。


なぜここまで原稿を溜め込んでしまったんだろうと、過去の自分に嫌気がさす。


(いつもそうだ、私はズボラ過ぎる)


たまにこういう風にネガティブになるが大抵寝て忘れるから大丈夫だ。我ながら単純だなと思う。


(ホントどうしようも無いわ。)


仕事をしなければ、黙々とパソコンを打つ。

カタカタカタ……


(ネガティブになってても仕事は終わらん!もうひと踏ん張り!)



と、自身を励まし頬を強めにひっぱたく。パシッ と 乾いた音がした。クヨクヨすんなと自分に言い聞かせ、仕事モードに切り替えた。


私は再びパソコンに向かう。


--



……どれくらいたっただろうか。最近稀にないほど集中していたようだ。書き終えた原稿を見て充実感を覚えた。私はゲームシナリオライターなので、誤字脱字よりも構成や矛盾がないかを念入りにチェックして、

最後に「小野田 千尋」と私の名前をいれて……よし、出来た。


この達成感は毎回言い様がない。夏休みの宿題を 1日前に終わらせた小学生の時のような高揚感に襲われる。


嬉しくて椅子から勢いよく立ち上がると

長い間椅子に座ってたからだろうか、

ポキポキッと腰から小気味良い音がした。


(いっ!腰がぁ……)


腰をさすりながら、フラフラとソファーに歩く。

疲れがどっと出たのかドサッとソファーに倒れ込んでしまった。あ〜、今日も外に出てないなぁ。人と会いたい。なんて今日を振り返る。


(あぁなんのために頑張ってんだろう)


……目が乾燥したのだろうか、目がジリジリしてきた。


それにイライラし始めた私は


「あぁぁぁ!疲れたぁあビール!ビール飲もう!」


と大声で叫んでしまった。

しまった、夜中なのに騒いでしまった。

大丈夫だよね?……とりまビールゥ!


私は疲れた体に鞭を打って、駆け込むようにして冷蔵庫を開けた。ひんやりとした風が私の頬を冷やす。

気持ちいい〜


私はソファーに座りビールを開ける。


カシュッ


心待ちにしていた音が響き渡る。一気にグイッと飲み干す。

苦い、でも旨い。これが癖になる。



「うんまぁああ!やっぱビール最高だわ」



というか22の女がビール一気飲みというのは我ながら女としてどうなんだろうか。

世間ではこういう女を干物女というのだろう。


部屋が汚い、生活能力が低い、行動が荒い。

私はこういう奴だ。

これはとてもまずいのではないだろうか?


ビールが回ってきたのか、疲れたのか眠い。思わず横になる。

もう、干物とかどうでもいいからぁあ、眠い。あ、でもお風呂……ま、いっか


(やっぱり私は干物だわ)


そこで私の意識は途切れた。



--

カチカチカチ……

しんとした部屋に周期的な時計の音だけが響く。



「ん!?」



どうやら寝てしまったようだ。

チラッと時計を見るともう午前三時過ぎ。

年越しちゃった。


(また寝るにしても中途半端な時間だなぁ)



やはり3時過ぎの夜中だから寝るべきかと

あくびをひとつ、またソファーにもたれたときに

気づいてしまった。



お腹空いた




そういえば、ずっとパソコンの前で作業をしていたから夕ご飯を食べていなかった。

気づいてしまったら空腹には耐えられない。

冷蔵庫にはもう何も無いはず



(コンビニ行こうかなぁ)




久しぶりの外だ。ちょっとコンビニに行くだけなのに、胸が高鳴る。



いや、まて髪の毛がベタへタだ。

自分の体を見渡すと、服もかなりシワがよっていた。

こんな格好で外を出歩くのはさすがに恥ずかしい。



お風呂入ろう



急いでタンスをあけ、タオルを持ち、早足でお風呂場へ行く。



--15分後


お風呂場から頭を拭きつつ出ると

ムワッとした空気が部屋の冷気に吸い込まれていく。この涼しさが暑がりの私には堪らない。


思わずコーヒー牛乳でも飲みたくなる。


久しぶりにゆったりとした時を過ごしている。

この原稿が終わったら、暫く仕事は後なのだ。



私の務めている会社は休みと働く時がハッキリとするように、任意で在宅ワークが出来たり休みがある程度大きいかたまりであったりする。

そういうポリシーらしい。


私はこのシステムで割と助かっている。固まった休みで怠けるだけ怠けて、またキッチリとスイッチを入れる。 これが性に合っている。


ともかく、明日から10日は完全なる休みだ。

まずは荒れた部屋の片付けだな。



ずっと仕事をしてたのと、もともと片付けが嫌いなのがマッチして部屋が他人には絶対に見せられないぐらい荒れている。それはもう、業者を呼びたくなる程度だ。




そんなことを考えるとリビングだけでも片付けたくなってきた。


(よし!ご飯食べる前に片付けしよう)



謎のやる気に満ちた私はまずは足元の雑誌

終わったらテーブルのごみ

服なども、ものの30分で片付けてしまった。



(人間やれば出来るもんやな)



自分でやったのに思わず感心してしまった。

そして、もうおなかが減りすぎてどうにかなりそうだった。



片付けがリビングだけ終わった嬉しさから、浮ついた気持ちで皮の長財布、スマホだけ持ってふらっと近くのコンビニに向かった。



あとから良く考えれば女の独り歩きはとても危険だったのに私はよく考えていなかった。




まさかあんなことがあるとは思っていなかったのだ。










近々更新します

2019/05/10

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ