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【旧版】ストーカー竜娘と復讐鬼の王子様  作者: 逢月 悠希
第3章 ストーカー、合法化する。
25/69

25.ストーカー、親友さんのことを知る。/前

※破天荒おじさん全く帰ってくれないので、またしても前後編です……後編は夜間更新となります。

 ロゼッタの声掛けにより、開きかけた扉はしっかりと閉ざされた。

 ラザラスは頭を振るい、話題をALIAの話に戻す。


「ALIAのふたりはオスカーさんに見出された、というわけですか……」


「そうそう。風邪引いて病院行って、何となく屋上に行ってみたら……その瞬間、雷が落ちたかと思ったね。屋上の扉の先で、天使二人組がこそっと歌ってたんだわ……」


「お、おお……?」


「そんなの、もう拾うしかなくない? それで勧誘しようと思って『そこの天使ちゃん』って言った瞬間、天使から毛を逆立てた猫みたいになったふたりの姿が忘れられないね」


「お、おお……? えーと、失礼ながらオスカーさん。それ、不審者扱いされてませんか……?」


「うん。ふたりとも芸能関係全く知らない子だったのが災いして、最初はおれと、その後『良いのいるよ』って呼び出したカルヴァンも明らかに詐欺師だと思われてたね。病院の人を間に挟んで、おれが俳優兼芸能事務所社長って伝えてもらって、それでやっと信用してもらったんだわ~。カルヴァンだけだったら詰んでたわ、顔が知れてて良かったよ」


(あー、なるほど……そりゃそうだよね。)


 ジュリアスとアンジェリアからしてみれば、屋上で隠れて楽しく歌っていたところに『おじさんA』と『おじさんAに召喚されたおじさんB』が現れたということになる。これで警戒しない方がおかしい。

 オスカーは顔が世間一般に知られているために普通はこうならないにしろ、それにしたって危うく通報案件じゃないか気を付けろよとロゼッタは思った。当のロゼッタもラザラスがおかしいだけであって、大概に通報案件なのだが……。


「ホント言うと、歌える俳優枠で『CROWクロウ』に引っ張りたかったんだよね。でも、どっちも顔出したくないって言うし。結果的にカルヴァンが拾ったけど、名付け親はおれだよ。リアン君はふたりの本名知ってるよね? 割と良いセンスしてるっしょ?」


「はは……知人がユリアさんだって知った瞬間の衝撃がすごかったです。アリスさんちょっと複雑だったんじゃないかなって」


「うん、わざと。ちなみに『アリス』ってのも、ユリアちゃんの本名をちょっと意識したよ」


「ですよねぇ」


(ん? もしかして……ジュリアスってユリアとスペル似てたりするのかな? ……あっ、似てるどころじゃなかった。これは……!!)


 『アリス』がジュリアスの『リアス』を人名っぽくもじった名前だとしたら、アンジェリアの方は『ジェリア』をもじって『ユリア』だと思っていたら、違った。

 どうやら彼女の芸名、相方の本名『ジュリアス』から取ってきていたらしい。ついでに『アリス』は大方ふたりの名前を足して二で割った感じ、といったところだろうか。


(で、ALICEとJULIAだからALIA、なんだね。ああ、全然本名かすってないなって思ってたけど、LIANはこの法則で付いた芸名か。LIAから始まる名前にしたかったわけか)


 ロゼッタは【識字】を活用してALIA三人組の本名と芸名の法則を解き、勝手にひとりで楽しんでいた。ラザラスは無理矢理入る形となったせいでこうなったのだろうが、確かにジュリアスとアンジェリアの名付け法則は面白いと思う。


(それにしても、オスカーさんって俳優兼事務所社長かぁ。そりゃ強いよね)


 これまでの話について、ラザラスがアンジェリアに確認の意味で視線を向ければ、彼女は素直に頷いてみせる。声を全く出す気配は全く無いが、本当なのだろう。


「リアン君はどこに落ちてたの? キミはカルヴァンが自分で拾ってきたんだろ?」


「落ちて……あー、ええと、アリスさんとユリアさんの近く、ですかね……?」


「ああ、そこで繋がってたんだ。そりゃそっか、ユリアちゃんが人見知りしない相手連れてこないといけなかったんだろうしねぇ」


 オスカーは「ね~?」とアンジェリアに話し掛ける。アンジェリアはオロオロしている。これまでの経緯を聞くに、彼女らは明らかに顔見知り以上の関係なのだが、まだお喋りが出来る仲ではないらしい。

 恐らく彼女、お喋り可能になるまでに相当な時間を必要とするタイプなのだろう。社長カルヴァンも苦肉の策で『落ちてた』一般人を拾ってきたというわけだ。


 オスカーは放送画面を一瞥し、流れているコメントを確認する。大体の話題を察知し、彼は何も考えてなさそうな能天気な表情のまま、口を開いた。


「そうそう、ユリアちゃんめっっっちゃ人見知りすんのよ。もうねー、人語発せなくなるレベルで人見知りすんの」


(えっ、それ言っちゃうの!?)


 アンジェリアがオロオロしている……可哀想に。

 オスカーの『人語発せなくなる』発言にコメントも大盛り上がりだ。しかし弁解しようにも、下手に口を開こうものなら本当に人語でないものを発するのだから、何も言えないのである。


「お、オスカーさん……!」


 慌ててラザラスが間に入る。オスカーはケラケラと笑い、ラザラスに視線を戻した。


「そうねぇ、弄るのは『リアン君だけにして』って言われたし、キミの話に戻ろっかな」


「は、はい……」


 それはそれで困る。だがアンジェリアを標的にされるのはもっと困る――やむを得ず、ラザラスはオスカーの標的になる覚悟を決めた。


「ハウライのハーフって言ってたね。でも、グランディディエ育ち?」


「はい、父がハウライ人です。育ちはグランディディエですね」


「じゃあ、お母さんがグランディディエ人な感じ?」


「えーと、それは……」


 この質問に対し、ラザラスは少し悩んだ。それを見てオスカーは「良くない質問をした」と判断したのか、彼を動作で制そうとする。しかしラザラスは頭を振るい、口を開いた。


「母は、ヒト型のキメラドールだったそうです」


「おおっ!? 勇気あるね……キミ、つまりハーフキメラってカミングアウトしたわけだけど」


「いやいや、命懸けで産んでくれた母のことを偽りたくなかっただけですよ。私が外見で売っていたら流石に問題視されるかもしれませんが、ALIAは顔出しNGのタレントですしね」


「キミの顔面は今、事故ってるしねぇ……」


「ははは、そうですね」


(キメラドール……クィールさんがそうなんだっけ。あと、どう考えてもヴォルフさんもそうだよね……何か、あまり世間的な印象は良くなさそう)


 キメラドール達は、ロゼッタ達のような珍しい亜人とは別の意味で肩身が狭そうだ。特に容姿を商売道具にしている芸能人にとっては非常にシビアな問題となるのだろう。

 オスカーはラザラスを値踏みするように見つめ、ニヤリと笑う。


「まっ、二世キメラならともかく、ハーフキメラならそんな問題にならないっしょ。ハーフキメラの俳優ってチラホラいるよ。だから、キミも俳優やらない?」


「……へっ?」


 ラザラスが停止する。だが、オスカーは止まらない。


「おれねー、二年くらい前に主役の声優やってたアリス君とちょっとだけ共演したことあんのよ。でね、おれの勘がキミだって言ってるの」


「は、話の流れが、見えません……?」


「リアン君、あの子に演技指導したことあるっしょ? 具体的に言えば、『TG』……『Traveling Game』の三話で。その時点で、キミには俳優の才能大アリだと思うんだよね」


「!?!?」


 ロゼッタには何のことだかさっぱりなのだが、ラザラスには大いに覚えがあったらしい。ついでにコメント欄も大盛り上がりだ。


(へえ、名作アニメって奴なんだ。ていうか、ジュリーさんって声優もやってたんだ……オスカーさんもだけど。多分、この人なんでも出来るんだな)


 視聴者の皆様曰く、TGはバスケットボール選手の青春を描いた作品で、当時は賞を沢山取った有名な作品らしい。

 声優としてのアリスの代表作であり、現時点では最後の出演作なんだとか。二期や映画化の話も出ていたらしいが、アリスの失踪と共にどちらも既に製作中止が発表されているそうだ。それを勿体ないと叫ぶファンのコメントで画面が埋まっていく。


「今でこそアリス君の代表作って言えばTGのキサラだけどさ。あの役、諸事情で明らか向いてなかったんだわ。ぶっちゃけ監督の嫌がらせ指名配役だったし。そもそも、ヤンキーだよ? 清純派で売ってるアリス君に遊び人ヤンキー役だよ?」


(確かに、あのピュア男に遊び人ヤンキーぶつけるってすごいね……)


 元は嫌がらせだったとはいえ、それを最後まで演じ切った上に代表作へ昇華させたジュリアスの大勝利だ。

 どうせ「若いのに売れっ子なのが腹立つ」とかそういう理由で嫌がらせを吹っかけたのだろうが、盛大に下克上をぶちかまされた監督はさぞかし悔しかったことだろう……。


「今、その監督は何してますか? 四話で監督変わったのは知っていますが」


「消えたねぇ。まあ、元々ぽっと出系で有名どころじゃなかったし……って、リアン君? 顔が邪悪に満ちてるよ? やっぱアレやったのキミかい!」


 下克上には間接的にラザラスが関わっていたようだ。もしかしなくても詰んでいたジュリアスを指導して見事な遊び人ヤンキーに化けさせたのが彼だ……そして監督は消えた、と。相当なやり手である。


(俳優の卵としては、本当にすごい人だったんだろうな。うーん、ラズさんの顔に傷付けた犯人の墓を荒してやりたいね……)


 ロゼッタの思想も大概に邪悪に満ちているのだが、思うだけならば自由なので現状問題はない。

 オスカーはニヤリと笑い、両腕を組んだ。


「そうねー、キミなら遊んでても、バスケやってても、おかしくないか」


「偏見やめませんか!? バスケは割と好きでした、けど……」


「冗談冗談。でも間違いなく、リアン君は演劇関係にかなりガッツリ足突っ込んでた、もしくは突っ込んでる子とみた。ねえ、視聴者のみなさーん?」


 完全に番組を乗っ取っているオスカーは唐突に視聴者に質問を投げ掛けた。ノリの良い視聴者の皆様は【そうですね!】と普通に返してくれている。ラザラス的にはあまり好ましくはない話題だろうが、雰囲気そのものは非常に微笑ましくなっている。



「そんなリアン君がバックアップに付いてたってのに、アリス君はどこに行っちゃったんだろねぇ」


「ッ!?」


――そして、オスカーは狙いすましたかのように、生放送で現ALIAの地雷を踏み抜いたのだった。

余談:『Traveling Game』は少年誌とかで原作が連載されてそうな正当派(ただし主人公がヤンキー)系スポーツアニメだと思います。

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